naka-maの心言・2

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ウルトラマンコスモスの無念(2002)

ウルトラマンコスモスの無念

2002年6月8日、結果的にウルトラマンコスモスが終了した。翌週の予告編まで放映して。6月15日、放送打ち切りになった。

筆者は過去にも書いたように、円谷プロダクションの「ウルトラマン」シリーズの、特に初期の「ウルトラQ」「ウルトラマン」を贔屓にしている。そして、子供の親となった現在も平成シリーズを子供と共に(それを名目にして)見てきた。そこには、「ウルトラ」世代のスタッフが、新たに子供達に投げかけた未来へのメッセージがあった。絶望に打ちひしがれた大人、正義を知らない若者、そんな現実に流されることなく歯を食いしばって立ち向かう姿勢を感じた。だから幼児だけでなく小学生にも見てもらって、次の世代に託したい。冗談でなくそう思った。

日本がW杯決勝トーナメント進出に涌いた6月14日の新聞の片隅にウルトラマンコスモスの主演男優が二年前、未成年の時犯した恐喝罪共犯で逮捕されたことが報じられた。
ウルトラマンに変身する春野ムサシ役の男優は無名であるがさわやかな印象で子供と母親の人気を集めていた。物語も「心優しいウルトラマン」であったので、旧来からの”大きなお友達”ファンには不評であったが、やさおとこっぽい外観も好感されていた。ウルトラシリーズ初の1クール延長が決まって、収録も終了、放映を待つばかりだった。さらには映画公開も決まっていて前売りが始まっていた。

未成年時の犯罪だから実名は出ないが何故か番組名が報じられたので、隠しようがなかった。子供番組であったから面白い記事にするためにだったのか、そもそも番組名がなければ記事にならなかっただろう。何故二年前の事件が今、と思えば何か策略を感じるが、事実ならその詮索も意味がない。

結果として、直前まで恐喝をしていた(いじめの延長であろう)男をオーディションに出した所属事務所と採用した製作会社の責任も問われる。しかし、やはり最も大きな問題は、この男優がそのことを隠して「ウルトラマン」に出演したことだ。男優の世代はウルトラマンを知らない。ちょうど低迷期に子供時代を過ごしたはずだ。だから「ウルトラマン」を演じる意味がどれほど大きな事なのか、認識が無さ過ぎた。所詮子供番組、だったのだろう。

筆者の世代にとって「ウルトラ」が持つ意味は大きい。こんな時代だからこそ、と製作スタッフもあえて古いウルトラマンを甦らせたのだ。子供だけではなく、本当はしょぼくれた大人達にも見てもらいたかったのではないか。その気概を、知りもしない若者が蔑ろにしてしまった。もちろん捜査の成り行きによっては、男優に同情しなくてはならないかも知れないが、今は腹立たしいだけだ。

ウルトラマンのような特撮は、費用が膨大なので、玩具などのキャラクター使用料金で埋め合わされる。製作したばかりの作品はイニシャル費だけで売り上げにほとんど貢献しない。従って円谷プロは予想するに相当な損害のはずだ。ウルトラマンコスモスは悪くないのに。テレビ局(毎日放送)、映画配給元(松竹)も契約次第だ。玩具メーカ(バンダイ)も在庫が売れるかどうかだろう。この轍から、今後のウルトラシリーズが製作されるかも心配だ。すでに予定されている後番組が流れると、円谷プロ自体も危うい。

制作側には、初心に戻って再起されることを期待したい。

今日、アニメに切り替わったウルトラマンをみて、「コスモスはどうしたの?」と心配顔の子供(4)に、「宇宙に帰って、また新しいウルトラマンが来るんだよ」と筆者は言った。

2002.6.15