naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

ちばあきおの漫画

何度か筆者のまんが歴について語りましたが、筆者がちゃんとペンで自分で漫画を書いた中学の頃に、もっとも影響を受けたのが、ちばあきお「キャプテン」と「プレーボール」という野球漫画でした。
それまでみていた「巨人の星」とか「男どアホウ甲子園」などの野球漫画は、野球を舞台にした「ピッチャーとバッターの一騎打ち」がテーマであって、実のところ野球についてはこれらを読んでもよくわからないというものでした。しかし、劇画のはしりであっただけあって、作画は緻密に描かれており、川崎のぼる水島新司の画力はすごいものでした。
ところが、野球の絵としてはどうでしょうか。筆者のアルバムには漫画をまねて野球のフォームのポーズをした写真がありますが、どう見てもこれでは野球がうまくできるはずが無いというポーズではずかしくなります。川崎のぼるの漫画では歌舞伎の見栄を切るようなフォームで、ランナーがいてもピッチャーはふりかぶって、足を高々と上げ、力の入らない腕の振りで投げます。水島新司のほうは、自身も野球をやるようですが、「うおおおお」とわめきながら投げたり打ったりするのでどう考えても力が抜けてしまうでしょう。(最近の水島新司は絵のフォームとかは良くなったのですが、自分の漫画の主人公がやたらと三冠王や新人賞をとったりするのでしらけます)

よけいなことまで書いてしまいましたが、そこで、ちばあきおについてです。
ちばあきおは、ちばてつや実弟で、しばらくてつやのアシスタントをしていたそうです。ですから、初期のあきおの漫画も、てつやの「国松」のような図柄の主人公が出てきます。ですが何かをきっかけに、図柄をがらっと変えます。何かは知りませんが、ちょうどちばてつやが「あしたのジョー」で、カミソリのような図柄になったころに、その対極とも言えるような、ペンタッチを重視した、墨絵、?、とは違うのですが、筆で輪郭線を書いたような(実際そうしたかもしれません)柔らかい線になります。
絵自体も簡略化されており、主人公の「谷口タカオ」などは、いがぐり頭に、逆への字の口(いつも笑っているような)に丸顔で、長谷川町子の「カツオ」を正面から見たときの顔(といっても分かりにくいか・・)です。他の「丸井」「イガラシ」といった主人公たちも、顔はちばてつやの脇役で出てくる「ドングリ」や猿の顔です。
そして、体の描き方もまるっこいのですから、これでは最初に見たときの印象は、ギャグ漫画で野球をやっているというものでした;)。

それがどんどん引き込まれて行ったのは、超人的な技とかは何も出ない、リアルな野球チームとそれが強豪チーム(こちらは超人的だったりする)に立ち向かって行く様を淡々と、しかし、試合の流れも丁寧に描かれたストーリーでした。

と、ここまでは、よくちばあきおファンの頁にも書かれているのですが、このちばあきおの絵がうまい、ということにふれたのはあまりないのではないでしょうか。
それに僕が気付いたのは、高校に入って自分で野球を始めてからでした。それまでは、遊びで野球をやったことしかなかったので、補欠でしたが真剣に野球のことを勉強しました。頭で基本フォームが分かってもなかなか実行できないものです。しかし、まわりには手本が沢山いましたから、分かりにくい解説書では言葉でしか分からなくても、目で見てわかるようになるものです。

すると、谷口のバッティングや、丸井のスローイング、イガラシのピッチングが重なってくるのです。正確には彼らのようなポーズの瞬間というものはありえないのですが、動きの流れで見るとそのポーズがエッセンスのようになって見えてくるのです。
例えば、ピッチングフォームは従来の漫画でも決めのポーズですが、これが体が前のめりになって背中が見えます。ありえないポーズですが、実際に全力投球したときのフォロースルーはこういう姿勢に流れて行きます。
直球、カーブ、シュートなどが投げ終わった手の形で分かるようになっているというのも、読者サービスもあるでしょうが、最近の超スローモーションで見ると、投げる瞬間に鋭く手首をひねるのが見える訳で、その瞬間という見方もできます。
バッティングは、ひっぱりと流し打ちのフォームの違いがあったりするのですが、すごいと思ったのが、凡打した時にわずかにフォームが崩れていることを表現しているところです。
守備などは従来ほとんど描かれないものでしたが、これをダブルプレーのときの流れでもってとくにセカンドのスローイングに、滑らかな流れの表現が感じられます。

試合が激しくなると、だんだんユニフォームが汚れて、体中真っ黒になります。顔の表情も分からなくなるほどです。極端に疲労の表情が出てくるのですが、体力をふりしぼってプレーする表現でしょうか。こういう表現もスポーツ漫画にはそれまでなかったものです。

そんなエッセンスを、昔を思い出して書いてみました。
そういえばコマ割りも、上下四分割を基本に、オーソドックスなものでしたね。
しかし、ペンタブレットで直接書くのはむずかしいですね。ペンタッチがうまく出ませんし、手元と画面がうまく一致しません。かといって今またペン書きしても大変ですし。簡単に手直しできるのは良いですが、結局半日掛かりで描いていました;)
ですから著作権は大丈夫です。って間違えるはずもありませんね。


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