naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

ポータブル赤道儀を考える(2)

さて、目標仕様を「高精度」に重きを置いたわけですが、高精度のためには誤差要因を考えなくてはなりません。

赤道儀の目的は、星の動きに合わせて=地球の自転速度に対抗して、カメラを動かす、星を追尾することです。この動きは、完全にワウフラッターのない回転運動が基本です。その動きを逸脱する動きが追尾誤差です。

一般に知られている赤道儀の追尾誤差は、「ピリオディックモーション」、周期誤差です。まず、これについて考えてみます。
微動(減速)機構にもいろいろありますが、減速比の大きな機構の中で、直進運動を回転運動に変える「タンジェントスクリュー機構」がありますが、微動範囲の位置により、回転速度が変わってしまいます。そこで、多くの赤道儀は「ウオーム機構」を用います。ここでもウオームについて考えます。

ウオームは、ウオームギア=ねじ、とウオームホイールの組み合わせだけで大きな減速比が得られる機構です。

ウオームホイールの加工精度は、歯形形状(これは加工工具の問題)以外には、偏芯やピッチ誤差が考えられますが、基本的には一回転で元に戻る誤差で、一回転=24時間のあいだに最大最小の誤差周期が現れるのですから、通常の使用時間内ではあまり影響はありません。
先述のピリオディックモーションエラーは、主にウオームねじの偏芯に起因します。


Photo

上図の上方にあるのがウオームホイル、下方がウオームねじです。
このように、ウオームねじがウオームホイルから偏芯して離れると、進み遅れが生じます。この量はウオームねじの偏芯量によって決まります。
ウオームホイルの半径に応じて、ピリオディックモーション誤差量は決まります。この動きはウオームギア一回転の時間で一周期起こりますので、「ピリオディック」なわけです。

(他にも、モータとウオームねじとの伝達歯車の偏芯による誤差も同じ周期誤差になりますが、比較的効きが小さいものです。)

以上より、ピリオディックモーションを小さくするには、

・ウオームねじの偏芯を小さくする

のが一番です。しかし、この表に示した0.01mmは通常の旋盤加工の限界です。これ以上を狙うには両センター加工の研削盤が必要ですが、加工費が高いのが難点です。

つぎに考えられるのは

・ウオームホイールを大きくする

です。図から判るように、半径に反比例しますから有効なのですが、機械が大型化することと、ウオームホイールの加工費が高価なことが問題で、従来、この方法は、大型天体望遠鏡の架台にしか使われていませんでした。

どちらも高価になりがちなのが問題ですが、同じ加工精度なら、誤差の小さくできるウオームホイールの径を大きくする方が論理としては優れています。

今回、狙ったのは従来の構造では実現できなかった新しい構造による高精度化です。
表にある、ウオームホイールの半径ですが、45mmというのは直径90mmに相当し、ドイツ式赤道儀の可搬型のものの中で、大型のものです。65mmは最近、”謎の(笑)メーカー”から出ている高級ポタ赤で、ポタ赤としては最大のウオームホイール径を持つものです。
いずれも10数秒角と大きく、一般に高精度を謳っている赤道儀のスペックである5″には到底及びません。おそらく市販品ではウオームねじの偏芯を2、3マイクロメートルに抑えて精度を確保しているのでしょう。
半径180mmになってはじめて、精度が5″以下になります。この数字が目標仕様です。

以下次号(^-^;