naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

ポータブル赤道儀を考える(5)

夏に完成した新型ポタ赤ですが、当初、思わぬ事態にその性能の確認すら出来ない状態でした。

まず、最大の問題は、三脚の固定でした。写真のような微動マウントに載せたのはのちになってからでして、当初は直接ジッツオの三脚に載せていました。しかし、三脚ねじが緩んできてしまい、極軸が狂うことがしばしばでした。
現在の微動マウントも、強度面では不安で、微動ねじが部品に干渉したりして不満足ですが、それでも極軸合わせには微動があると無いとではえらい差でした。

次に、ベース板のたわみも問題です。写真のように5mm厚のアルミ板ですが、重量物を載せると強度は問題ないものの、たわみがでて、極軸が狂います。この狂いは、微動マウントを始め、各所に原因がありそうですが、軽量でかつ剛性をあげるには鋳物を使いたいところですが、型代を考えると難しそうです。

もともと耐荷重は大きい構造であり、15°程度しか傾かないのでアンバランスには気を使ってなかったのですが、ビクセンのポルタ経緯台を載せて5kg以上のレンズを搭載すると左右(東西)のバランスが大きく狂い、ウオームのかみ合いだけで支えることが出来ずに傾いてしまいました。結局、アリガタあり溝を付けて、左右の大体のバランスが取れるようにしました。ですが通常の自由雲台に載せればそれほど気を使わなくても良さそうです。

ほかにも、ウオームねじのスラストがたもベアリングで抑える等して、ようやく安定して性能が出るようになりました。
いやあ、仕事の試作でなくて良かった。ですが自腹で製作すると仕事のときより、お金に気を使いますね(爆)

さて、その精度はと言いますと、こんなかんじです。

ニコンD300に300mmをつけて、450mm換算で撮影しました。画角がカタログ値通りならば、1ピクセルの大きさは、対角3.7″、一辺2.6″となります。

極軸を東にずらして、南北に流れるようにした星を撮影すれば、それが直線からずれる量が追尾誤差、ピリオディックモーションです。
周期はウオームねじ一回転当たりの時間です。720歯では一回転が3分ですからそれ以上の露光時間をかけます。

この写真は、フォトショップで解像度を10倍にしたものです。その際に「バイキュービック法(滑らかなグラディエーションに最適)」を選ぶと滑らかに補間してくれますから、見かけ上の分解能が上がります。

幅で4″-8″程度、ピリオディックモーションとして±2−4″になっています。

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やや不安定なので、もう少し長時間露光としました。3分露出を4回繰り返し、一つにまとめました。
オリオン座の三ツ星なので天の赤道上のもっとも厳しい条件です。

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その部分拡大です。
今度は、画像解像度を10倍にするときに、「ニアレストネイバー法(ハードな輪郭を維持)」を選んだのでピクセルがそのまま見えます。

20090214ps

上から一つ目と二つ目の間あたりで、やや大きく振れています。この量は3.5ピクセルほどです。12秒程度でしょうか。他の範囲では安定して±1ピクセル程なだけに惜しいです。

まあ、それでも当初目標の±4″程度になっているので、他の要因も考えれば上出来として良いかと思います。極軸さえきちんと合わせれば、200mmクラスは確実に、300mmクラスでもまあまあの追尾が出来るようです。

以前お見せした写真ですが、このポタ赤で撮影したものです。
ニコンD300、AF-Sニッコール200mmF2(借り物;)です。




ということで、カメラバックに入る程度の大きさで、やや重くなったものの、高精度な新型ポータブル赤道儀を作ることができました。

本当は、いろいろ設計変更したいところもあるのですが、資金難でここまでとします。

あわよくば市販できるのでは、型代も回収したいし、なんて考えていたのですが、例えば部分微動範囲を超えるとストッパーが無いのですっぽ抜けてしまうとか、巻き戻しに時間がかかるとか、いろいろ使い勝手に問題があることと、精度をうたうならば品質保証は困難なこと、そしてなにより、原価が想定値を超えてしまったこと、といったことがわかったので、あきらめました。

一個もののため、今回の製作費は型代こみで35万強でした。
これでは市販品を買った方が安いですねえ。

ですが5人くらい、買ってもいいという人がいてくれれば、半額くらいにはなりそうです。
精度4″が見込めれば、50万円程度の赤道儀と同じなので、そう考えれば安い?オートガイダーばやりですから、ノータッチガイドでこの精度の赤道儀はもう出ないかもしれませんし。
実験道具として買ってもいいなんて、そんな人いますかねえ。

ですがこれはロマンですよねえ。自分で考えた赤道儀がうまく動いて撮影できるというのは。
あとは、壊さないように(笑)中国まで持って行って7月の皆既日食の撮影をするのが楽しみです。