エネルギー効率の数字を積み重ねると、ハイブリッドカーは成り立たないことになってしまいます。ところが実際にハイブリッドカーの燃費は良いわけでして、もしかしてプリウスに普通のエンジンを積んだ方が軽いし空気力学も良いし、その方が燃費が良いんじゃねえの、なんて言っても通じないのです。
では、なぜ燃費が良くなるのか。それはただ単にエンジンとモーターを一緒に使うのではなく、それぞれの長所を生かし、短所を補うためにちょうど良い駆動力に切り替えながら走行する細やかなシステム制御がそれを成し遂げるのです。
一般的エンジンの性能曲線を示します。これは1979年頃のホンダ1.5lエンジンのものです。
横軸は回転数、縦軸は出力とトルクです。回転数が0のとき、パワーは無く、トルクも小さい状態ですが、回転数が上がるに連れて、出力は増大しますが、トルクはあるところで最大値を向かえます。そこからトルクは減り、パワーも最高回転数手前で減ります。
これでは停止時から発進できませんし、高速走行もできませんから、変速機を使って、アイドリング状態から一定の回転をさせて、徐々に加速するようエンジン出力を車輪にクラッチで空転させながらつないでいくわけです。高速時にはハイギアードでエンジンは低速回転で、車輪は高速回転になるようにしています。従って、車の走行中は必ずしもエンジンの効率の良いところを使っているわけでは有りません。先述の効率20〜30%をさらに悪化させた状態で発進し、加速し、停止するわけです。最も良いのは中高速60km/hあたりの一定速度のときです。かつて、燃費には60km/h定地走行もありましたが、もっとも良い燃費の値を示しています。
次に電動モーターの性能曲線模式図です。一般の性能曲線は定格電圧で横軸にトルクをとるのですが、ここではエンジンと同じく回転数にしています。
電動モーターは、内燃機関エンジンと全く違うのがわかります。トルクは起動時が最も大きく(起動トルク)回転数に比例して減ります。出力は逆に回転数に比例して上がりますが定格出力付近で最大となり回転数がさらに上がると最後には出力もトルクも出なくなります。
以上から、エンジンとモーターの組み合わせを自在に変えられるシステムにおいて、相互を補うことが可能だと思いつきます。
まず起動時には、トルクが有れば良いので、モーターだけ、またはエンジンはサポートだけにしてスタートします。
加速時には、モーターのトルクが低下するぶんを補うエンジントルクを使い、さらに加算されたトルクは、搭載されたエンジン単独よりも大排気量エンジンと同じだけの加速を得ることができます。
一定速ではモーターは停止し、エンジンの最も効率の良いところで駆動します。
高速時にはエンジン駆動にモーターがサポートしますが(ホンダはエンジンのみ)、このときは通常エンジンの方が効率が良くなりますので、空気抵抗を減らすなどする必要があります。
減速時には、できるだけモーターを発電機代わりに使って回転エネルギーを電気として充電します。これを回生ブレーキと言います。電車でも同じようなことをしていますが、昔は抵抗器で熱にして放出していました。自動車においてもタイヤやブレーキシューの熱、エンジンブレーキとしてピストンの空回しとして無駄にしていたエネルギーです。回生ブレーキはハイブリッド車の最も優れた所かもしれません。
停止時にはエンジンもアイドリングストップをします。
ホンダの「IMAハイブリッド」の場合の模式図です。
このように、燃費、とくに発進停止を繰り返す10・15モードに効果のあることがこれでわかりました。逆に言うと定地走行では、とくにホンダの場合は、ガソリンエンジンと何ら変わりないということになります。従って街中走行にはハイブリッドカー、地方道にはガソリンエンジンより効率の良いディーゼルエンジンカーが高燃費を示すということになります。
ハイブリッドカーは、我が家のような買い物にも遊びにも使う場合、効果がありそうだということがわかりました。もちろん製造工程での二酸化炭素排出だの、レアアースだの言い出せばきりがないことはわかっています。しかし、技術の進歩は一足飛びに行きません。電気自動車の欠点も見えて来た今、現実にドライブ先で排気ガスの少ないハイブリッドカーで、直接的な公害を減らすことをしていこうと考えるに至りました。
ということで、この車がもうすぐ来ます。
長々と講釈たれてこれかよ、と言われても、そのとおりです;)。