さて、この写真は以前このブログに出しましたが、はくちょう座デネブ付近を撮影したものです。
NikonD810A、ニッコール105mmF1.4>f2.5
30秒、ISO1600、20枚スタック、自作ポータブル赤道儀
たった30秒の露光を20回行っただけですが、北アメリカ星雲や網状星雲などの赤い星雲と銀河が写っています。105mmといえば中望遠レンズ、標準ズーム域に入っていますが、これでも固定撮影では2秒も露光するだけで星が伸びてしまいます。30秒といえども赤道儀が必要になります。
昔は重い天体望遠鏡にカメラを同架して撮影したのですが、今はポータブル赤道儀があれば可能になりました。
実は前回同様のポータブル赤道義で撮影することはできます。
まず、前回同様の1ピクセルあたりの角度のグラフです。
極軸合わせ精度はどうでしょう。
前回同様、極軸が方位方向にずれた場合と高度方向にずれた場合で異なるグラフになるので、別々に示します。
まず、方位方向、東に10′(角度分)極軸がずれた場合です。高度は、もっとも誤差の大きくなる天の赤道を向いています。
なお、露光時間を2分としています。なお、長焦点レンズは口径が大きくなるので結構星が写るようになりますから、30秒程度から使える写真が撮れます。
南中0時を見てみますと、赤経方向(左右方向)は0、赤緯方向(上下方向)に5″ずれることがわかります。1ピクセルあたりの角度は先のグラフから100mmレンズなら10″ですから大丈夫、200mmで5″でぴったり、300mmでは3.4″ですからアウトですが、星の大きさを考えれば許容できそうです。
南中0時でみると、赤経に8秒、赤緯は0です。今度は左右に伸びてしまうわけですが、100mm以下なら無問題、300mmでも30秒程度まで問題ないと言えます。
これで大丈夫、というわけにはいかないのです。
まず、極軸合わせ精度が10′、というのがどのくらいの精度か見てみましょう。
この製品ではありませんが、極軸望遠鏡を覗くとこのようなパターンが見えます。オレンジのx印が北極星になるように合わせると極軸が合うということがわかるアプリからの引用です。
この中に書かれた中央の円の半径が4′、直径が8′ですからほぼこの大きさの中に入れる必要があります。
この辺りから嫌気が差す人も出てくるようですが、最近ではこのようなアプリが無料で手に入りますから大丈夫です。
ただ水を刺すようですが、微動雲台を使ってやっと合わせても、カメラを取り付けたり構図を変えたりすると動くことがありますので注意が必要です。そーっと動かすしかありません。
そしてもう一つ、問題があります。それはピリオディックモーション(周期誤差)です。次の写真は300mm望遠レンズ、約10分の合成写真ですが、星がうねって写っています。この動きは赤道儀のウオームギアの偏心加工誤差によって生じる周期的な誤差です。
星の動きを拡大したものです。デジカメの1ピクセルが見えると思います。
この星は南中に近いものです。先のグラフを思い出してください。この動きのうち、上下方向は極軸の方位方向のズレによって起こったものであり、約36ピクセルと読み取れました。左右方向は極軸の上下方向のズレによるもので約16ピクセルです。極軸を正確に合わせればこの動きは見えなくなりますが、ここにピリオディックモーションが載っていて、これは赤道儀そのものの精度ですから消えません。
ピリオディックモーションの振幅は約20ピクセル、67″となります。±30″と表現されます。
フィルム写真の頃は、10分の露光時間は必要でしたから、この誤差は許容できない大きさです。
しかしデジカメの時代、0.5分程度の露光に留めれば、なんとか点に写りますので、うまくスタックすればなんとかなるかもしれません。
ただ空の暗いところですともっと露光してもバックが白くならない=S/Nの良い写真が撮れて、暗い星雲まで写る、ということになるのでせっかく赤道儀を買ったのだからなんとか使えるようにしたいものです。
人気のビクセンポラリエ。それでもピリオディックモーションは大きめ。
ポータブル赤道儀はコンパクトであればあるほど、機構上ピリオディックモーションが大きくなります。
ピリオディックモーションを±5秒程度に精度を上げた良心的な製品も存在するのですが、どうしても高価になり、通常10万円以上します。何せウオームギアの偏心精度をサブミクロンにまで追い込まなくてはなりませんから。
(興味があれば「トーストテクノロジー」「ユニテックSWAT」で検索してください)
大きさにこだわらなければ、この値段なら天体望遠鏡の赤道儀も買えるレベルになってきます。マニアックな人はこの高精度ポータブル赤道儀に、赤緯軸とウエイトまで取り付けていますが、これならほんと、普通の赤道儀でも良さそうです。
ここではなんとか軽くて(安価な)ポータブル赤道儀にこだわりたいところですが、安価というのには黄色信号が点ります;)
で、唐突に出てくるのが、組立天体望遠鏡です。(以下次号;)