今回説明で使う機材は前回に加えて以下のとおりです。これにパソコンあるいは、ZWO社「ASIAIR PRO」(¥4万)を使います。
で、唐突に出てくるのが、組立天体望遠鏡です。この天体望遠鏡は2009年世界天文年に出た星の手帳社の製品ですが、おそらく日本で一番売れた天体望遠鏡です。おもちゃのような作りですが、アクロマートレンズ口径40mm焦点距離273mmです。
これを切断して、M42アダプターを付ければ超安価なガイドスコープになります。ヘリコイドネジ、接眼バレルにビニールテープを巻くとガタ取りにちょうどよいです。
三脚ネジにはシューアダプターをつけて、シューブラケットに取り付けて使おうという魂胆です。なお、シューブラケットの一方は、赤道儀のアリガタ台座が3/8インチネジなのでヤスって穴を広げました。
そしてこんなふうに組み立てました。
シューブラケットは自由雲台とアリガタ台座に挟んで固定しました。
ガイドスコープはシューブラケットに取り付けていますが、向きを極軸と同じ方向に向けました。
ここから極軸合わせをします。
ASIAIR proの機能に、撮影カメラを使った極軸合わせ機能(PA)があります。
ガイドスコープに取り付けたASI CMOSカメラをメインカメラとして選択するとPA機能が使えます。
アプリはスマホ、タブレットで使います。まず起動してPA機能にします。
ポータブル赤道儀はASIAIR proとは繋がっていなくてかまいませんので、「skip」します。
露光時間などを決めて、一枚撮影すると、「plate solve」という「画像認識」を行います。
次に、赤道儀を約60度回転させます。
ここが重要なところで、今回選んだスカイウォッチャー製「スカイメモs」は極軸に粗動回転用クランプが付いています。これを緩めて極軸周りにカメラ、ガイドスコープを約60度回転させます。
他のポータブル赤道儀には回転できないものもあります。ビクセンポラリエのようにターンテーブルで回転できるものもありますのでそういう機種を選べば同じことができます。
2枚目の「plate solve」を行うと、2枚の位置関係から極軸のズレを算出してくれます。
今度は赤道儀を載せた極軸微動雲台を使って画面に表示された方向に上下微動、左右微動を行い、再び撮影、リフレッシュ、「plate solve」します。
ここからが根気のいる作業です。なんとか数分以内に合うと顔が笑顔になります。画面のですが、自分も笑顔になっていたかもしれません。
finishすると花火でお祝いしてくれた。
なぜ、極軸望遠鏡もあるのに(ポラリエは別売)、このようなことをしたかというと、まずカメラを付けた状態では極軸望遠鏡が見えません。
ポータブル赤道儀にとってカメラの重量は大きいので、後から取り付けた時に動く可能性があって、それならカメラをつけて撮影方向に向けて極軸合わせができるこの方法が良いと考えました。
ポタ赤でこれをやるのは世間では初めてかとちょっと自慢げでしたが、YouTubeに海外の方でやっている人がいました。残念;)
ガイドスコープをカメラの方向に向けました。この構成では天の赤道方向にしか向きませんが、極軸がしっかりあっていれば問題ありません。
また、カメラの向きを被写体に向けますが、これをファインダーを覗きながらやるとポータブル赤道儀を動かしてしまうことがあります。
今回は、アプリ「stars photo」を使って概略合わせて、あとはライブビューを使えば下手に動かすことはありません。
組み立て天体望遠鏡は安くて良いのですが、やはり青い色がボケるので、できればもう少し良い望遠鏡がおすすめです。この写真はBORGの50mmですが、これは小型で良いレンズです。ただ残念なことにディスコンになってしまいました。
ガイドスコープの固定にアルカスイスのアリ溝を使って、カメラにつけたL字アリガタに固定しました。この方法はコンパクトで確実です。この方法も自分で考えてやったのですが、YouTubeで海外の方がやっていました;)。
ここからは撮影カメラを切り替えて、ガイドスコープのasiカメラをオートガイドカメラに、本来の撮影カメラをメインカメラにセットします。
オートガイダーもはじめは面倒ですが、ASIAIR proで使うことができます。使用方法は、ここでは省略しますが、いろいろ探せば使い方が出てきますのでそちらで;)。
撮影もカメラをUSB接続できる機種(Nikon、canon、Sonyなど)であれば、設定した露光時間、枚数を自動的に撮影します。
ASIAIR proの現バージョンでは、撮影画像のplate solveから、画面に写っている星や星雲などの名前が分かります。
300mmレンズで、ガイド有りとガイド無しでは同じ1分の露光時間でもこれだけ違います。
この差はピリオディックモーションを補正しているかどうかです。
ガイド有り
ガイド無し
前回の写真と同じ拡大率のアップ。
10分の露光で動いたのは極軸合わせ誤差によるものです。一方、前回は±30″も動いて波打っていたピリオディックモーションは約4″におさまっています。
ポータブル赤道儀でもオートガイダーがあると望遠レンズでも使えますね。
今回は、コロナ騒ぎで外出自粛でもあり、横浜の自宅から300mmレンズで撮ってみました。
さそり座アンタレス付近。M4が写っています。1分露光で10枚スタックしています。
ヘラクレス座のM13。300mmではちょっと小さく、天頂付近で導入が大変なところですが、starsphotoのおかげで撮影して少し構図を変えるくらいで構図が決まりました。
ポータブル赤道儀でも300mmレンズくらいまで撮影できます、ということでした。
正直言って、重いカメラとレンズでは少し触ると極軸が動くので結構失敗しましたが、100mmくらいなら余裕で撮影できるようになります。
広角レンズとポータブル赤道儀にはオートガイドは不要ですが、ガイド端子付きの機種を選んでおけばこうして融通も効くということがわかりました。ただ、かかったコストを考えると、高精度ポタ赤と比べてどちらが良いか、それはまあそれぞれということですね。