惑星撮影はフィルムでの撮影を除いても20年以上続けています。デジタル当初はデジカメでのスチル撮影連写から始まって、VGA動画撮影、HD動画撮影が圧縮により上手くいかないのがわかって、2016年からCMOSカメラになりました。
しばらくの間、ZWO社ASI224MCによるカラー撮影でした。以下のようなシステムでしたが、途中拡大レンズは色々検討して今はNikonEiC-16に落ち着いています。
この記事です。 シュミットカセグレンとの格闘(撮影システム)
デジカメの頃から、Lynceos(Macアプリ)によるDeconvolution、Wavelet transform処理をかけたカラー画像をモノクロに変換した上でステライメージの画像復元(最大エントロピー法)による平滑化、シャープフィルターをかけたものをL画像とし、元のカラー画像をRGBとした「L+(RGB)」合成をしたものを最終画像にしていました。
これを一歩進めてZWO社ASI290MMのモノクロカメラ画像をL画像にし、より高精細を狙ったのが昨年のシステムです。
この記事です。木星土星火星2020年6月9日
これにより明らかに高精細になったのですが、問題があって、カラーカメラとモノクロカメラをフリップミラーで切り替えるため、撮影は必ず望遠鏡の傍で行わなくてはならないことでした。それまでのカラーカメラだけでしたら撮影用のパソコン(MacBookPro2013)を外に置いておいて、無線LANで部屋のパソコン(MacBookPro2016)からmacOS標準の「画面共有」というリモート操作をすることで、エアコンの効いた環境で蚊にも悩まされず撮影できたのですが、これではそうはいきません。
フリップミラーの電動化も考えたのですが、制御ソフトが作れないので諦めざるを得ませんでした。
そこで、いわゆる三色分解、実際にはクリアフィルターも加え、L,R,G,Bの色分解フィルターによる撮影を行うことにたどり着きました。カラーフィルターは電動フィルターホイールが一般化して、自動撮影がやりやすいのです。
気流の悪い日本では少しでも撮影時間の短いカラーカメラの方が有利と言われています。またカラーカメラでSony IMX462を採用した高精細カメラが出てきたのでこれで当初のカラー一発撮りに戻ることも考えましたが、海外では主流の色分解撮影を経験することにしたのです。
今回は、自動、リモート撮影を目的として少しでも楽に;)短時間で撮影できるようなシステムを目指し、またWindowsパソコンではなくMacで撮影できる目処が立ったので、お役立ちというより筆者の忘備録として記事にしてみます。
撮影システム外観です。フリップミラーは当初の導入監視用にアイピースを取り付けるためと、撮影倍率を従来からのF30程度にするため残しました。
その内訳です。
フィルターホイールが途中に入ったので、ビクセンフリップミラーのスリーブを外し、手持ちの高橋バリチューブ小(これはフィルム撮影用に35年前に購入したものが役に立った)によりねじ込んでいます。なので上の写真のようにフィルターホイールの向きが斜めですが使用上関係ありません。また確認用の方はやはり手持ちの直進ヘリコイドで同焦点が出るかと思ったのですがギリギリ少し浮かさないと出ませんでした。
さて、今回は自動リモート撮影が目的なので、パソコンとの接続と運用が問題でした。
この写真のようにMacBookPro2013は1世代前なので左右にUSB1基あるので右にカメラ、左にハブを介して赤道儀とフィルターホイールをつけています。これはカメラの転送速度が重要で、ホイールと赤道儀は遅くても良いためです。旧世代Thunderboltにはアダプターを介してSSDをつけました。
撮影アプリは「FireCapture」v2.7βを使うことにしました。
Mac用には「oaCapture」というアプリもあるのですが現状ではDe-rotation=自転による移動を補正してくれるアプリWinJUPOS (Winしかない)に持っていくのに不便なことがネックとなりました。
また、ASICapというアプリもありますが、これは画面の作りが性に合わず;)使っていません。
実はこの二つのアプリならこれから述べるINDIの設定をせずに使えるのですが、わざわざ手間のかかる方を選んでしまいました;)。
「FireCapture」の正式バージョンであるv2.6ではASCOMにだけ対応して、INDIは使えませんが、v2.7βでINDIに対応し、フィルター交換の「Auto Run」がやりやすくなったことで、もともと使いたかった「Auto Guide」がINDIで使えることが大きな決め手でした。
天体機器をパソコン上で使う標準仕様であるASCOMは現状Macでは使えないので今まで天体用にはMacは敬遠されてきた歴史がありますが、INDIというさらに高機能でマルチ OS対応のプラットフォームをMacでも使えるようになったのです。
以下に忘備録として手順を示します。
まずMacにINDIを導入します。そのためにプラネタリウムソフト「KStas」をインストールします。
赤道儀、カメラ、フィルターホイールを接続した状態にします。ここで筆者の赤道儀はSkyWatcher製なのでコントローラでスターアライメントしないと時計駆動も始まりませんので不便です。そこで「EQダイレクト」ケーブル(星見屋で購入しました)を使いました。
立ち上がるとこのような画面になるので、矢印先にある「Ekos」アイコンでEkosを立ち上げます。
プロファイルを選択します。最初は「+」を押して次の画面に沿って機器を設定します。設定画面は次画面です。
できたら次に「▶︎」を押します。
接続した機器をマウント=EQMod Mount、カメラ=ASI290MM、フィルター=EWFを選んで名称を決め保存します。以降はこのプロファイル名称で全て選択されます。
再生?するとアイコンが並びます。マウントアイコンを押すと以下の画面になります。
トラッキングONにすると追尾が始まります。(しないと始まりません)
モーターコントロールボタンを押すとコントロールパネルがでて矢印キーで操作できるようになります。
「FireCapture」v2.7ベータはもちろんMac版です。ただしMac版では使用できるカメラメーカーは2社と少ないのが難点です。
セッティングのアイコンボタンのどれかを押し、「INDI Server」を選びます。
「Use INDI Server」をチェック、コネクトします。
「Motorized filterwheel」電動フィルターホイールの設定です。
Motorized filterwheelをチェック、INDIを選ぶと接続しているINDI機器が出ますのでフィルターホイールを選びます。
「Initialize filterwheel」を押し、実際にカラーフィルターを取り付け、ホイールの順番に設定します。
「Telescope」を押し、「Use telescope interface」をチェック、
「INDI Server」を選び、「Initialize interface」をクリック。
「Auto guiding」を押しCalibrate。この時、カメラの向きが南が上になるようにします。
「Filters」から「Use RGB sequence」をチェック、下の#1から順番にフィルターの順番を決めます。これにより、#1から#4まで自動的にフィルター交換します。
「Start capture automatically after」の後のボックスからフィルター交換に必要な時間を入力します。これにより電動ホイールの回転時間を稼ぎます。筆者は2秒にしました。
実際のプレビュー画面に惑星が入るように天体望遠鏡を操作します。先のINDIコントローラーを使ってアイピースを見ながら導入し、フリップミラーをカメラに切り替え、「ROI」(クロップ)のピクセル数を適度に設定します。
その画面中央に惑星像を導入したら、「Autoguide」アイコンを押します。
すると惑星中央に赤い十字が出ます。それ以降はここを基準にオートガイドが始まります。
風が強かったり振動があったりすると追従しきれませんから随時INDIコントロールパネルで手動導入しなおしますが、基本的に勝手に追尾してくれます。これができるまではコントローラで一所懸命動かしていました。
なお、安定したら「AutoAlign」ボタンを押すとソフト的に画面中央にしてくれますが、クロップ範囲を外れると惑星が切れてしまいます。そこから外れないようにコントローラーを操作するのが大変でしたが、オートガイドを使うことでほぼ自動で大丈夫になりました。
「Autorun」ボタンを押し、「Free sequence」にすると下のボックスに例が出ていますので好みのシーケンスを組みます。
ただしここでは同じフィルターを繰り返すことができません。筆者の場合「B-G-R-L-L-R-G-B」という順番で撮影したい(こうすると中央時間が各色揃う)のですが、そうは組めないので、前半を「Autorun」、後半を先述の「Use RGB sequence」による自動フィルター交換を使います。
以上のようにして、惑星の色分解撮影が半自動でできるようになりました。
これを居室からリモートアクセス(画面共有)することでリモート撮影ができます。
なお、ここまできたら電動フォーカスもしたいところですが、リモートでは画面が荒いことからプレビュー画面で正確なフォーカシングができず、保留しています。
(L+R+G+B)色分解撮影と(L+(RGB))撮影の画質上の優劣はまだ確認し切れていないのでさらに”精進”したいと思います;)。