naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

武漢皆既日食観測顛末

2009年7月22日、”今世紀最大”という気の早い呼び声の高い(実際持続時間は最長なのですが)皆既日食を、中国、武漢(ウーハン)へ行って見ることができました。
筆者は20世紀最長の1991年7月11日のハワイ-メキシコ皆既日食を見て以来です。

この日食は、かなり以前から天文ファンの間では注目されており、日本国内で見られるは、1963年北海道以来のことなのです。見られるのは吐噶喇(トカラ)列島、屋久島、奄美大島など。

早い段階でトカラ列島悪石島等は受け入れに制約があることは現地ホームページで判っていましたから、奄美大島、喜界島を狙って、二年前に宿へこつこつと電話をかけて行きました。
しかし、このときすでに予約はいっぱいで、キャンセル待ちの状態でした。奄美大島のリゾートホテルなら家族連れで行って庭で日食観測なんていうのがいいと思ったのですが。

昨年夏に、原村であった星祭りに於いて、望遠鏡販売店が上海、杭州での観測会を募集する「予告」をしていました。そこで募集初日に第一番目に予約を入れました。
高校の友人まさや氏も、半ば強引に?誘ってみました。
その頃にはまだ他のツアーの募集は案内すらなかったので、殺到すると思ったのです。案の定すぐにキャンセル待ちになりました。

ところが日程が4日休暇を取らなくてはならず、日食が終わってからも観光ツアーがあるのが余分でした。そうするうちに、「弾丸ツアー」と称する一泊二日のツアーが望遠鏡販売店「趣味人」から発表されました。即、そちらに予約を入れることにしました。

行き先は武漢(ウーハン)、といってもどこなのかよくわからなかったのですが、上海のスモッグを逃れられるだろうという期待もありましたし、内陸なので海洋性気候より晴天率が高そうなのも魅力でした。

そして、チャーター機の直行便なので乗り継ぎが無く、重量制限が30kgまでというのも長所でした。

まだ当分先と思っていたのに気がつくと説明会、最終案内、振込と続き、出発直前に荷造りをしました。持って行く機材は、カメラ=ニコンD300二台、レンズ=ニッコール70-300EDVR、14-24ED、以上は機内持ち込み、スーツケースにはジッツオ三脚、自由雲台=梅本製作所製、そして、このブログでも紹介しました、nakama式自作ポータブル赤道儀をウオームギアがぶつからないよう二つに分解したもの、そのコントローラー、電源です。

これらをトランクの片側になんとか詰め込むことができました。

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これに最小限の着替え、水等を詰め、がたつき防止にクッションとなる毛布を入れましたが、総重量が33kgになってしまいました。毛布などを抜くと28kgになり、一安心。

7月20日海の日に出発です。
というのは、チャーター機中部国際空港セントレアから昼に出発なのですが、朝横浜を出て行くのも大変なので空港横の東横インに前泊するためです。
ところがその日になって、同行のまさや氏から、重量がある荷物を持って駅を移動するのに大変と車で行くように変更しようと話があり、運転も任せて行けるのならありがたいということで、午後4時に出発。

ところが三連休の最終日の渋滞だけでなく、事故渋滞が加わり、東名高速の沼津から一般道へ逃げたものの、結局8時間もかかって翌日になってホテルに到着でした。これがケチのつきはじめだったか、運を呼び込むきっかけだったか。

ともかく無事に出発ゲートに辿り着きました。
案内板に武漢の文字が。

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飛行機が苦手な筆者ですが(流体力学の教授が離着陸時は力学法則から外れて気合いで飛んでいると言っていたから)、日食となれば、命を掛けて乗るしかありません。
三時間で武漢無事到着。

到着後、携帯電話(イーモバイル)を入れてみると、チャイナモバイルに切り替わっていました。そのままいつも通りに使えるのを確認しました。便利な世の中になった物です。

ツアーは観測地である武漢のスポーツセンターである武漢全民健身活動中心のサッカー場とその周辺へまず行きました。このツアーがよく考えられていることは、まっ先に観測地へ向かったことと十分なスペースを確保したことです。
200人近いツアーなので、心配でしたが、二面あるサッカー場とさらに広い広場を借り切ったことで心配が無くなりました。実はメキシコへツアーで行った時には、人数に対し観測場所が狭く、さらに三カ所に分かれていたために、条件の差があり場所の取り合いが起こったのです。

しかし、武漢は暑い。
気温37°、湿度70%ということです。
ちなみにメキシコラパスの方が暑かったかもしれませんが、湿度が全く違う、からっとしていました。日本を含め、この時期の東南アジアはすべてこうなのでしょうか。

ディナーの中華コース料理も口に合う味付けで、ホテルもきれいで広く、これもポイントが高い。

さて運命の7月22日、朝6時に会場へ到着。
場所はあえて前景となる木を入れられるようにしました。

機材を設置し、テストも終えて、ビニールシートに寝転がっていましたが、同行のまさや氏はひっきりなしにカメラを三台設置移動を繰り返します。どうも初めての皆既日食に興奮気味のようです。


いよいよ第一接触。日食の開始。
部分日食も良いのですが、なんといっても皆既日食が本命なので、望遠カメラは自動撮影にし、広角で会場の景色を撮りました。皆既中はこちらもインターバル撮影に切り替えます。
ただ雲が多くなって来てました。部分日食には良いアクセントなのですが、おかげで部分日食の形がノーフィルターでも写りました。

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しかし雲はさらに多くなって行きます。流れは速く、晴れ間もあるので、皆既中に晴れ間になることを祈るしか無い状況でした。

その期待もむなしく、第二接触時刻が迫ります。こうなったら気持ちを切り替えるしかありません。ダイヤモンドリングを狙うべく減光フィルタを外し、シャッター速度をマニュアル露出に切り替えました。しかし、かかっている薄雲は、思いのほか濃く、なかなか適正なシャッター速度が見つかりません。第二接触がカウントダウンされる中、残った太陽がみるみる減って行くのに焦りました。逆に言うとデジカメだから雲を通しての撮影が出来たとも言えます。

その雲を通してのダイヤモンドリング

2009年7月22日9時23分53秒(中国時間)
ニコンD300+70-300mmEDVR(300mm)、自作ポータブル赤道儀
ISO200、1/400秒、F5.6

懸案だったレンズゴーストは最小限だったようです。


20090722_092353


皆既日食が始まると、かねてからの計画通り、望遠レンズは9段オートブラケットで、インターバル撮影により自動運転です。しかし、雲が多く、露出が当初予定よりも遅めにしてはじめて内コロナが写る状況でした。

2009年7月22日9時24分56秒(中国時間)
ニコンD300+70-300mmEDVR(300mm)、自作ポータブル赤道儀
ISO200、1/1.3秒、F5.6

このとき、本当はAFでピントを合わせ直す予定だったのに、すっかりとんでしまいました。ゼラチンフィルタを外しただけなのに若干のピントずれがあるようです。1991年のときにも感じていたのですが。
それにしても、コロナを見て、うつすことが再び出来たことに感激、感謝です。

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もう1台のD300には14-24mmをつけ、これもインターバル撮影しました。
もともと雰囲気を撮影するのが楽しみだったのですが、雲が出たことでさらに雰囲気が出たように思います。
全周に渡り低空が美しい茜色に染まり、風がふき、気温が下がるのが判りました。

前景に入れた三本の木の真上に皆既日食が来ました。

2009年7月22日9時24分56秒(中国時間)
ニコンD300+14-24mmED(14mm)、三脚固定
ISO400、1秒、F4.5

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第三接触に時間には雲が厚くなってしまい、再び見えた時には細く太陽が出て来ました。周りの景色は昼間に戻っていました。

皮肉なことに皆既が終わった後、晴れ間が広がりました。復元時の部分日食も自動撮影にしたのですが、なんとフィルターを付け忘れて何枚か撮影してしまい、連続写真にはならなくなりました。
やはり放心状態だったのでしょう。

そんな状態での記念写真です。
自作ポータブル赤道儀の大きさがわかると思います。

20090721_105358s

武漢では、その後昼食のバイキングを食べ(これもおいしかった)、空港で14時のチャーター機に乗り込みました。
こうして、弾丸ツアーは終わりました。

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しかし、帰り着くには、中部国際空港から横浜まで辿り着かないといけません。
到着は18時すぎでしたが、なんだかんだで、ホテル発20時、帰りは渋滞は無く、まさや氏の運転で、筆者は助手席に乗りくつろいで帰ることができました。まさや氏ありがとう。
帰りのナビで見たテレビでは悪石島をはじめトカラ、屋久島、上海が悪天候で見られなかった、一方小笠原近海では船が晴天域を探して、好条件で見られたことが紹介されていました。船の人はうらやましいけれど、筆者たちは雲の合間に皆既日食を見られたことに感謝したいと思います。

でも、また見てみたい気持ちになりました。
日本では2012年に金環日食が太平洋岸で、2035年皆既日食が新潟、北関東で見られます。
これを期に皆さんも天文に興味を持たれてはいかがでしょうか。