naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

デジカメローパスフィルタの行方・・CP+2012を見て(1)

CP+2012は新型デジカメラッシュでした。2011年に天災で苦しんだカメラ業界の復活の証でもありますが、そのなかでもローパスフィルタレスデジカメが多く出て来たことに筆者は注目しています。

このブログでは

一眼レフデジタルカメラ-3(2002) 2002.7.27 

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/2004/01/32002.html

デジタルカメラの行方2008.8 2008.08.14

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/2008/08/20088_9a80.html

CP+と高画素デジカメ 2010.03.19

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/2010/03/cp-8e66.html

と、長年にわたりデジタルカメラに取り付けられたローパスフィルタについて、

「早く35mmフルサイズで内部4000万画素以上、ローパスフィルタ無しの一眼レフをどこかから出してくれないものか期待しています。ビニングして1500万画素相当程度にすれば内部処理負荷も変わらず、本来のレンズ解像度を発揮する風景写真一眼デジカメができるでしょう。」

と言ってきました。

古くはコダックの一眼レフ、中判カメラのデジタルフィルムバックにはローパスフィルタは無く、ユーザー(ほとんどがプロのレタッチ)が後処理でローパスフィルタが無い時に起こるとされる「モアレ」「色モアレ(偽色)」を除去してきました。

その後、一つの画素でRGB三色が受けられる「ファベオン」素子の開発により「色モアレ」の起きないローパスフィルタレスカメラがシグマより出ていました。

昨年は、ペンタックス645Dが4000万画素の風景写真用中判デジカメとしてローパスレスを出して、いよいよ本格的な風景写真用カメラが出て来るのではないかと期待していました。

今年は、シグマの一眼レフが70万円から20万円台に一気に価格を引き下げ話題になりましたが、おそらく続々登場するローパスフィルタレスカメラに対抗するためであったのでしょう。

富士の「X1pro」は独自のカラーフィルタ配列により「規則性を弱めモアレを起きにくくして」ローパスレスに踏み切り、ニコンからは「NikonD800」と同じ機体で「D800E」という、3600万画素フルサイズで「ローパス機能を除去」したデジカメが出ました。リコーGXRの24-85レンズユニットもローパスフィルタの無い1600万画素APSサイズ、また、正確には分かりませんが、オリンパスから出た「OM-D」も1600万画素フォーサーズですがローパスを極めて弱くしたと思われるカメラが出ています。

D800025

NikonD800は特に先に出ていたD700に対し一気に三倍の画素数が話題になりました。

しかし、これまでフルサイズ(35mmフィルム相当)では1200万画素程度が適度な解像度、だと多くのメーカー、特にニコン、や評論が述べていたものが、急に3600万画素だのローパスフィルタレスだの言い出して、これこそ筆者が言い続けて来た方向にようやく到達しつつ有るわけですが、なぜそうなのか、いまひとつどこにも解説されていません。

そこで、筆者なりに、一応光学的観点から説明してみます。(と言っても筆者はデジカメの開発者でもありませんのでそれなりにですが)

一眼レフデジタルカメラ-3(2002) 2002.7.27 

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/2004/01/32002.html

で示したモアレ、特に色モアレについての図を少しいじったものを1000万画素デジカメ相当としてシミュレーションした図を再掲します。

1mp1

この図のバックグラウンドは「ベイヤー配列」というRGGBの4個のピクセルが1セットになったパターンがぎっしり並んでいます。一般的な単板撮像素子の表面はこのようになっています。全体に緑色が強いのはGの比率が高いからですが、これは人間の目の感度に合わせたもので、後処理でこれはグレーになります。しかし実際にRAW(生)データはこういう配列の輝度分布です。

ここに下図のような、ピクセルと同じピッチの白黒パターンを重ねています。これは撮影対象の細かい繰り返しパターンを意味します。

Smp1_2

このように、もとの被写体にはない色縞や模様が現れます。バックの色や模様と違うところを見てください。これらをモアレと呼びます。この現象はテレビでは昔から有名で、格子縞模様の服を撮影するとモアレだらけになってしまうので、出演者はこのような服は着ません。

このような偽の模様が、細かな繰り返しパターンである布地や建造物のパネル、手すりなどに現れるのです。とはいえ、以前の100万画素程度ではいろいろな場所で起こりえましたが、1000万画素にもなると、繰り返しパターンでよほど細かいものでないと出ません。

モアレを防ぐために「ローパスフィルタ」=「ハイカットフィルタ」が入っていて、上図パターンの半分のようにぼやかしてしまえばモアレは起きません。実際のローパスフィルタは複屈折を利用したものでこのようなボケ方では有りませんが、概念的には同じです。

さて、それでは同じ対象物を4000万画素のデジカメで撮るとどうなるか、シミュレーションします。

4mp1

先述の1000万画素との違いは画素数が4倍に増えただけで、バックのパターンがより細かくなっています。(図の1ピクセルずつが画素の大きさです)

重ねた対象物は同じパターンですが、下図のようにぼかしもわずかにかけただけで、絞りを絞ったことと同じ程度ですが、わずかに残った色モアレも消えています。

Smp_2

素数が増えることによってモアレが消えることが分かりました。しかし、これを見ればすぐにわかるように、これはイタチごっこです。つまり4000万画素になった所で、それと同じピッチの繰り返しパターンがあればそこでモアレが起こるのです。

しかし、一般的な写真撮影において、その確率はかなり小さくなることは直感的に理解できるでしょう。

さらに幸か不幸か、高画素を押し進めるとレンズの光学特性が追いつかなくなるので、もうそれ以上細かい模様が写り込む心配は無くなってしまうのです。これこそが従来、1000万画素も有れば十分、という根拠でもあったわけですが、それにつきましては続きます;)。