今年は東京、横浜などで「金環日食」が5月21日朝に見られます。すでに本屋にも特設コーナーがあり、このあいだはホームセンターのレジ付近に「日食メガネ」が置いてあったりと、徐々に注目されて来ています。
天文ファンにとっては、この機会に是非、日食を見てみましょう、と呼びかけたい所ですが、ひとつ注意が有ります。
皆既日食のようにほとんど真っ暗になってしまう場合を除いて、太陽は日食中でも決して目で見続けてはいけません。見るには「日食メガネ」や墨を流した水面に反射させる、紙に投影するなどの方法をとりましょう。
通常の天体望遠鏡も、以前は「サングラス」というアイピースに取り付ける濃いフィルターが売られていたのですが、割れる可能性もあり、PL法施行以降は販売されていません。かわりに、対物レンズ前に付ける減光フィルタ(デンシティフィルタ)がありますのでこちらを使います。
しかし、どこの天体望遠鏡屋さんでもかなり売れているようで、5月になると品切れ必至だと思います。
実際に、普段売れないものですから、いきなり増産といっても投資も出来ませんので作るにも限度があるからです。早めに入手しましょう。
同じように、太陽専用の天体望遠鏡も品薄必至です。太陽専用というのは、先述の減光フィルタだけではなく、ごく限られた波長、通常はHαという波長656.28nmだけを通す特殊なフィルタがついています。これによって太陽に普通見られる黒点だけでなく、プロミネンスやダークフィラメント(ともに紅炎)、彩層という太陽表面のガスを見ることができます。
Hαを見るためのフィルタは非常に高価で、通常、対物レンズ前に付けるメインフィルタだけでも同じ口径の天体望遠鏡以上の価格なのですが、近年、やや性能は劣るものの天体望遠鏡内部にフィルタを内蔵したタイプのコロナド社「P.S.T」が10万円程度で発売されました。それでも太陽しか見ることの出来ない40mm口径の望遠鏡ですから高価には違い有りませんが、この円高で7万円弱で手に入るようになりました。筆者も思い切って中古ですが買ってみました。
実はこの手の望遠鏡は米国製ですが非常にばらつきが大きいことで有名で、中古で買うリスクは大きいのです。しかし、金環日食のためだけに使えれば良いと思いチャレンジしてみました。
こんな外観です。昼間なので布団が干してあります(笑)。
大変小さく、安全な設計なのはうれしいところで、しかもアイピースは通常のものが使えます。付属のアイピースではなくニコンのNAV-SWをつけて広視界で見やすいです。
で、写真を撮ってみました。
「P.S.T」は写真撮影にはあまり向かないということですが、撮影は月を撮影するような、コリメート法で撮れます。特にニコンNAV-SWシリーズはTSA-1アダプタをつけるとデジスコブラケットが付きますので望遠鏡によらず撮影できます。
しかし、実際にコンパクトデジカメでは圧縮されたJPGしか撮れないものが多く、筆者のもそうですが、これですと限られた波長でしか撮れない撮影には大変不向きです。RAW(生)データで撮影できるデジカメが良いでしょう。筆者はデジタル一眼レフしか選択肢は有りませんでした。
ここではニコンD7000にニコンのアダプタ「NSA-L1」(ファーブルフォトEX用のアダプタ)をつけて、これを先述のNAV-17.5SW+TSA-1アダプタに取り付けました。
で、撮った写真はこんな感じ。
画面の中央に無いのは、「P.S.T」ですとフィルタの性能で光量ムラが目立ってしまうためです。
真っ赤です。実際、画像をRGBに分解すると、G、Bは真っ暗です。目で見た感じもこうなのですが、画面で見る時にこれでは見にくいため、カラーバランスを変えて黄色を強くしました。またプロミネンスは暗いため同じ処理をすると見えなくなります。そこで同じ画像から別々に処理したものを後から合成しました。
そして効果はまだはっきり分かりませんが5枚の画像をコンポジットしました。もっと枚数を多くしないと効果がなさそうです。
「太陽(Hα)」
望遠鏡:「P.S.T」(口径40mm、Hα)、ポルタ経緯台
カメラ:ニコンD7000、NAV-17.5SW+TSA-1+NSA-L1
撮影条件:RAW、ISO1000、1/250秒、5枚コンポジット、PhotoshopCS5による画像処理
2012年2月12日
10時49分
2012年2月18日
12時42分
2012年3月3日
12時02分
画像がまだまだ改善の必要がありますが、金環日食用には十分です。しかし、昼間に出来る天体観測、というのは思った以上に楽しめそうです。