naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

デジカメローパスフィルタの行方・・CP+2012を見て(3)

さて、まとめ、と行きたい所ですが、ここまで書いて来てなんですけれども、だから何?って感じでしょうか。

ローパスフィルタはモアレ防止のために付いている。高画素になるとモアレは目立たなくなり、絞ると回折現象でさらに目立たなくなる。ということを書いてきました。それでも何だかしっくりこないのは、モアレは無くなりはしないので、どこまでもローパスフィルタはいるのではないか、と感じられる方も多いと思います。

ですが逆に筆者の違和感はそこに有ります。なぜ、もうわずかに出るかどうか分からないモアレが許せないのか。それはユーザーにもメーカーにも感じるのです。机上の空論を繰り返して来たようなこんな解析結果を大事にしていていいのでしょうか。

なんだか最近よく言う「デジタル論」つまり是か非かしかありえない非現実論に見えるのです。

筆者はローパスフィルタが許せないのです。折角のレンズ性能をスポイルして、水晶やニオブ酸リチウムといった高価な素材で、その厚みのためにシャッター効率も悪化してしまう、こんなものに頼らざるを得なかったのは画素数が足りなかったからです。画素数が十分大きくなったいまこそローパスフィルタを排除してほしい、のですがモアレに臆病なユーザーとクレームが怖いメーカーはまだそこまで行かないようです。

今回、富士からは X-Pro1が、新しいカラーフィルタ配列の撮像素子でローパスフィルタを無くしました。このメーカーはかつて「スーパーCCDハニカム」という特殊な配列のCCDで高画素化を狙ったりしてフィルム技術の応用を図って来た会社です。今回は”よりランダムに”カラーフィルタを配列することで規則性を無くしてモアレを防ぐものです。

ホームページより拝借した図です。

従来の「ベイヤー」配列

Pic_02

富士の「X-TRANS CMOS

Pic_03

フィルタの配列に注目しますと、通常2x2個のピクセルで一組なのに対し、6x6個の組み合わせで一組としています。メーカーはこれをフィルムの銀粒子のように、と表現しています、が、それでも人工物の限界で、周期パターンなのに変わりは有りません。ですから厳密にはモアレは出る可能性があります。

デメリットとして、色の補間を行うのにより多くの周辺画素を参照する必要がありますから、画像処理エンジンの能力を多く必要とします。逆に言うとノイズ除去などの他の処理が他社ほど手厚く出来なくなります。技術者としてはこういう誠実な対応は好きですが。。

これからも高画素化の方がメリットが有ると筆者は見ています。

高画素否定論者の定番(笑)は、高画素でピクセル面積が小さくなり、S/Nが悪くなりノイズが乗ること、ダイナミックレンジが狭くなることをあげますが、これも、いかにも正論のようですが「お利口さん」の論で、実践的では有りません。

なぜならピクセル当たりのノイズが同等ならば高画素の方がノイズが目立たないのです。たとえばAPSサイズの1800万画素とフルサイズの3600万画素の1ピクセルの大きさはほぼ等しいので、ノイズの出方は同じです。しかし同じ画角で撮影した写真として一つの画面上でみれば、当然3600万画素の方が1/2のノイズに見えます。

そして、ダイナミックレンジは出力で12bit以上出ていれば人間の目には十分です。また写真プリント単位面積当たりの画素数が多いと、ちょうど点描画や、昔の白黒パソコンで見られた「ディザリング」のようにたとえ一点当たりのダイナミックレンジが低くても(この例では1bitでも)人間の目には階調を感じるようになるのです。もし、昔、同じ銘柄の35mmフィルムと120フィルムが同じ階調だ、と言った人がいたら笑われていた所です。それと同じことなのです。

だから残るは、画像処理エンジンの能力とデータ保存速度の向上が続く限り、どんどん高画素化するべきだと思うのです。おそらく5000万画素位で頭打ちになるはずです。もう一息です(笑)。

付け加えると、これもこのブログで何度も述べているように天体写真では常識的な「ビニング」を可能にすれば一気に解決です。2x2のブロックで、おのおのの色から3原色階調を求め、輝度はブロックトータルの出力で得られれば、ちょうどファベオンのように1ブロックで輝度と色が出来ますから、少なくとも色モアレは起きません。高感度にも強くなります。高速連写時にビニング、そうでないときは高画素と切り替えができるとなお良いです。

最後に、お察しのように筆者はNikonD800Eをいずれ買いたいと思っていますが、大きな不満は価格です。ローパスフィルタの付いたD800よりも高いとは何と言うことでしょうか。メーカーの説明はこうです。

図のように、D800Eにもローパスフィルタは入っていて、その機能を無くしているだけだ、D800:D800Eの販売比率は9:1だ、と言っています。つまり数のでない製品は高いのが当然だというのです。

図は発表記事から。

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カタログを見てもD800Eのことは小さく書いているだけです。しかし、メーカーは完全に見誤っていると予言します。雑誌やサイトを見ても、ここまで高画素ならモアレは気がつかない、万が一、のレベルという話が多いです。特に今までもデジタルフィルムバックなどでローパスフィルタレスを扱って来たプロからそう言う話が出ています。このメーカーもわざわざ2機種出すということは、恐る恐るなのでしょうか。どうせならローパスフィルタ機能のオンオフが出来るなら良かったのですが。いずれにしてもD800Eが値段が高くなる理由は無いのです。筆者はこの値段差がもっと小さくなるまで待とうと思います。

でも作例が出て来たら、風景写真に欲しくなるんだろうな。。;)

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