naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

導入支援天体望遠鏡2

導入支援装置の実例を示します。

古くから販売しているという点で敬意を表し、国際光器扱いの「スーパーナビゲーター」を写真拝借します。この例ではドブソニアンや経緯台ですが、赤道儀の場合も同じです。

なお、最近は「SkySafari 3 + NEXUS」が話題になっているようですが、これは無線LAN対応の導入エンコーダとタブレット端末などで使うアプリのことなので、実質的に変わりません。

ドブソニアンの高度回転軸(銀色の軸)の先に取り付けてある黒い箱が「ロータリーエンコーダ」です。そこから下に伸びているアームには読み取り部が固定されており、軸の回転に合わせて回転する円盤には、分度器の目盛りのように、一定ピッチの線が刻まれ、読み取り部を通過する数がカウントされます。

Wdnavi4

この例はドブソニアンの方位回転軸です。回転軸には大径のプーリー、エンコーダは小径のプーリーで、タイミングベルトで連動しています。こうすると方位軸が一回転する間にエンコーダの回転はプーリーの比だけ多く回転しますから、より細かく読み取れます。

Lbnavi1

このように経緯台の場合、高度軸と水平軸、赤道儀の場合、赤経軸と赤緯軸にエンコーダを取り付けて、軸回転の量を直接読み取り、これを表示装置に表示します。これを人間が見て、最終的には目標天体の方向に向けるわけですから、自動制御とすれば一種の「クローズドループ」となります。

エンコーダが軸回転量を直接読み取る、というのがみそです。これにより誤差要因が減ります。

また人間が回転させることで、素早い導入ができます。さらに周囲の危険や衝突を避ける判断ができる最高の制御装置(笑)なわけです。

さて、このような導入支援装置ですが、エンコーダで「直接」軸回転の読み取りを行うことで、ウオームギアなどの減速機構による誤差要因(ピリオディックモーション)は減りましたが、全く誤差が無くなったわけではありません。

エンコーダはこの例のように、回転軸にカプラーで取り付けられています。高精度な自在軸継ぎ手はそれだけでも高価なので、普通は直づけです。

Hf3

このようなカプラーの場合、偏心は避けられません。

偏心は機械回転軸の回転中心とロータリーエンコーダの回転中心がずれている状態です。

ためしに、偏心がどのくらい影響するのか計算してみましょう。

偏心方向により誤差が変化するピリオディックモーションですが、最大値を求めてみます。

Photo_6

図のような誤差計算式に、例として、

軸偏心量 0.3mm

エンコーダ半径 15mm

としてみます。

最大誤差は、偏心方向が約90度のときに現れ、

最大誤差 ±1.15度

となります。

この値をどう考えるかは使用方法によりますが、少なくとも自動導入のかわりというには見劣りします。この値を良くするには軸偏心を小さく抑えるか、エンコーダ直径を大きくすることです。

いずれにしてもエンコーダパルスが360以下と同程度の誤差では、折角の4000パルスの高分解能エンコーダーも意味をなしません。

それでも、自動導入のように一度基準点合わせをしたら完全にモータ駆動頼みになるより、クランプを緩めて手動で視準することが出来る方がメリットは有ると思います。

価格は、先述の「スーパーナビゲーター」で本体71400円、4096Pエンコーダx2=29400円、それに取り付け金具やケーブル込み104790円〜、とやや高価です。しかし専用取り付け金具は精度が良ければ価値はあるでしょう。

「SkySafari 3 + NEXUS」は本体220ドルとまあ安価ですが、エンコーダや取付金具など自前で用意しなくてはなりません。

さて、筆者がこれを書こうと思った理由は、「SkySafari 」を見たからです。「SkySafari 」はiPad、iPoneなどで動くアプリで、本来プラネタリウムソフトです。これにWiFiで自動導入マウントやエンコーダと連動できるようになっただけです。これを望遠鏡に固定して使っている人が多いのです。

筆者のiPadには他のプラネタリウムソフト「Starmap」が入っていて、これには「NEXUS」との連携はありません。

ですのでひねくれた見方かもしれませんが、この程度の精度を出すのになにもこんなに大それたことをしなくても、iPad電子コンパス、姿勢センサさらにはGPSによって空に向ければその方向の星が分かるではないか、と思えたのです。

実際にやってみると、手持ちを前提にしているためか、マップの拡大率を上げるとセンサによる動作が自動的に切れてしまいます。

従って細かいところが分かりませんが、それでも1度くらい(特に高低角)の繰り返し精度が有りそうです。

絶対精度はかなり怪しいものがありますが、(方位で5度くらい?)これも天体観測という特殊環境ですと、必ず、星=最高に正確な時計である天空座標系とマッチングさせるわけですから問題にならないはずです。

問題になりそうなのは、地磁気センサですが、これも望遠鏡に固定して使うならば、はじめに視準方向とマップの方向を合わせて固定してしまえば大丈夫かもしれません。

本当は筆者のようにシュミカセを使っている人間には、もっと精度が必要なのですが、0.5度くらいのセンサ出力はセンサ自体は持っているようなので、そうなってくると、

天体望遠鏡にわざわざエンコーダを付けるくらいなら、地磁気、姿勢角センサ、GPSを取り付けた方が有効なのではないか、

と思えて来るのです。

アプリが手持ち前提ではなく、こういった使い道のためセンサが高倍率でも切れない「固定モード」でも用意してくれると案外簡単に実現すると思うのですが、どんなものでしょう。