カメラ操作系の行方-2
(前回の続き)
では現在のデジタルカメラがどのような操作性なのか、メーカーホームページを見てみよう。
前回の整理内容のうち、特に重要な
A.シャッターボタンに指を掛けながらの作業
を確認する。
・オートフォーカス
>現在ほとんどのカメラはシャッターボタン半押しで機能する。またはAF動作ボタンによるが右手親指で行う。
・ズーム
>レンズ交換式カメラならばレンズ側にある。左手で操作。
・絞り設定(絞り優先オート、マニュアル露出時)
>従来はレンズ側にあったが、現在レンズに絞り環のあるシステムは少ない。ボディの電子ダイアルが多い。
・シャッター速度設定(シャッター速度優先オート、マニュアル露出時)
>多くのカメラは電子ダイアルで行う。
・露出補正(各オート露出時)
>各社各様で、重要な機能の割にいい加減である。
・フォーカス微調整
>キヤノンが先鞭をつけ、AF後にレンズのフォーカスリングを回すと一時的にMFになるようにした。現在はほとんどのメーカーが対応。
このようになっており、この中で
・絞り設定
・露出補正
がメーカごとの差が大きい。
特に露出補正は、銀塩カメラの頃、露出制御がまだ未熟だった頃には、標準露出を得るための補助的な意味しかなく、マニュアル露出にする方が早かった。
現在ではマルチパターン測光技術が大幅に進歩し、顔認識までできるようになっているので、標準露出はカメラ任せでほぼ大丈夫になっており、露出補正の意味は標準露出を得るためではなく撮影者の写真表現意思を反映させる手段に変わっている。
また筆者は絞り優先オートを基本にしているので、絞り操作は重要である。
(昔は絞り優先オート派、シャッター速度優先オート派がいた。後者はキヤノン、前者はニコンなどだった)
それでは各メーカーの操作性を見ていこう。
まず筆者が使用するニコンD810A。
絞り操作はグリップ前側にあるサブ電子ダイアル。
露出補正は露出補正ボタンを押しながら親指側にあるメイン電子ダイアルが標準。
正直に言って使いづらい。
双方の操作は右手でできるようにしたのだろうが、右手人差し指をシャッターボタンから離しての作業になる。
そこでユーザー設定メニューには、「メインーサブ電子ダイアル入れ替え」があって、親指だけで絞り操作ができる。
一方で、露出補正は「簡易露出補正」にセットするとメインダイアルでダイレクトに変更できる。
しかしこの二つは両立できないので、筆者は「簡易露出補正」をセットしている。
しかしニコンは過去のニッコールレンズには絞りリングがついていた。
このレンズを使うと、絞り優先オート、マニュアル時にはレンズ絞りリングが使えるので、左手で操作でき、「簡易露出補正」で右手親指で露出補正もできる、という理想的操作性になる。
だが、すでにニコンのレンズは絞りリングのないG、Eタイプしか新規製品は無い。さらにプログラムオート、シャッター速度優先オートでは、最小絞りにセットしないとエラーが出てしまう。
こちらはニコンD7000。
D810より下位機種に当たる。操作の大きな違いは、左肩にある「四つ葉ボタン」が「モードダイアル」になっていることだ。
モードダイアルには「ユーザー設定モード」が二つ登録できるのでダイレクトに呼び出せる。機能の多くなったデジカメではこの機能はとても便利で、筆者の場合、天体撮影用に「ディレーモード」など普段使わない機能をまとめてセットしている。
ところが意外なことに、上位機種のD810はなぜかユーザー設定がメニューの中に入っており、しかも撮影メニューと操作メニューに分けて入っているので、呼び出しが面倒である。
ニコンDf。これには期待していた。
しかし、絞りリングはどうしようもなかったのか、しかもサブ電子ダイアルが前面にあってさらに使いづらくなった。
各種操作リングは、ほぼ銀塩カメラの、ニコンFE、FAのようである。
しかし、なぜ露出補正ダイアルが中央のロック解除ボタンを押さないと回せない上に、ガリガリと動きが悪いのだろうか。
かつてのニコンFE2もロック解除がやりにくかったがもっとスムーズに回った。
さらにモードダイアルが右端にあるのに上に引き上げないと回せず、ユーザー設定モードも搭載されていない。
「デジタルとアナログの融合」というメーカーだが、ただの懐古趣味では意味がない。本当に融合というなら後述の富士フイルムくらいデジカメの機能を考慮して欲しいものだ。
電子ダイアルを早くから採用したキヤノン。
ニコンは上位機種と下位機種で変えているが、キヤノンは最上位機種EOS-1Dのみ押しボタン操作で、それ以外はモードダイアルがついている。これは論理的である。最上位機種は報道向けに設計されているので、フルオートが使いやすいようになっている。一方、EOS-5D、D810のような機種は風景、人物などのプロやハイアマが使うので、色々ユーザーセッティングし易い方が好まれるからである。
キヤノンは、メインダイアルが縦方向についていて、シャッターボタンから右手人差し指をそのまま動かして操作する。一方ニコンはメインダイアルを右手親指で回せるので、ニコンの方が優れてる。
しかし、キヤノンの中上位機種は、サブダイアルが背面についていて、露出補正がダイレクトに親指で回せる。この点に関しては優れている。
キヤノンはAF化の際にマウントを変更しており、先行したミノルタと同じく、レンズから絞り環を廃止してしまった。そのため二つ以上の電子ダイアルが必要になった。(ミノルタは当初押しボタンだった)
ニコンは従来マウントのままAF化できたので絞り環も健在だったが、プログラムオートやシャッター速度優先オートでは絞り環を最小絞りに固定する必要があった。それとコスト削減のためか、他社に合わせて絞り環を廃止してしまった。
現在では電子ダイアルをレンズに設けて絞り環の機能を持たせることができるので、ぜひ一眼レフでも復活させてほしい。
ペンタックス=リコーは省略させてもらう。
ここからミラーレスカメラを見てみよう。
ミラーレスカメラは、コンパクトデジカメの延長線にあるものと一眼レフカメラの延長線上にあるものがある。
オリンパスは一眼レフから撤退して、ミラーレスに特化した。
デジカメになって銀塩の頃より肥大化したボディからミラーレス化して、逆に、銀塩カメラ程度の大きさになった。しかもオリンパスOMの頃のデザインを復活させて好評を博した。
しかし、操作性はデジカメのそれであって、電子ダイアルを二つ設けている。
このカメラはEVFだから、こんなに一眼レフのペンタプリズムを模した形状にする必要はない。EVFはセンターにある方が良いものの、液晶モニターだけでも使えるように、着脱式が優れていると考えるが、意外に固定式の方が評判が良いのは、まだ使い方をユーザーが分かっていないからと思っている。
いずれニコン1V3のような着脱式EVFに戻ると思う。
次はソニー。
ソニーは、もともとレンズ交換式カメラを手掛けておらず、ミノルタのカメラ部門を譲り受けて始めたので、ミノルタのアルファマウントを継承したAマウントがあるが、最近ではよりバックフォーカスの短いミラーレス用のEマウントに注力している。
特にフルサイズセンサーを採用したα7シリーズは、現在大変人気で、プロも認めるところである。
競合メーカー、特にフルサイズセンサーの一眼レフにとって脅威になっている。好調理由をどのように分析するのかが重要だが、その小型軽量ばかりに理由を求めるのは間違っている。
ミノルタ時代とは決別したソニーの戦略が見て取れるのは、その操作性だ。
軍艦部にある液晶を廃止し、一等地とも言える右肩に露出補正ダイアルを設置している。
そして、電子ダイアルはニコン同様二個あり、メイン電子ダイアルはその近くで親指操作できる。コントロールホイールという電子ダイアルを背面に備える。
これにより、露出補正、絞り操作もシャッターボタンから指を離さずにできる。
さらにソニーの高級レンズには絞りリングがある。これは電子制御なのでかつてのニコンのようにプログラムモードなどでも設定し直さなくて良い。全レンズでないのが残念だ。
富士フイルムは、現時点で最も手厚い操作系を持っており、プロでも愛用者が増えている。
ミラーレスカメラとして優れた光学ファインダーを持つXproシリーズは、光学ファインダーに電子ビューファインダーが重なって表示できるハイブリッドファインダーで有名だ。
X-Tシリーズは一眼レフのようにEVFがセンターについており、オリンパス、ソニー、さらにニコン、キヤノンのミラーレスカメラも同様になって、これが標準になってきた。しかし、やはりEVFは着脱式が良いと考える。
EVFはまだ発展途上であり、解像度、色、フレームレートの向上が見込まれる。そしてかつてのプロ用一眼レフのようにファインダー交換式のカメラも出てくるであろう。
さて操作だが、このカメラは大変凝っていて、全レンズにコントロールリングが付き、絞り環の役目もする。そしてシャッターダイアル、露出補正ダイアル、感度設定ダイアルを持ち、特に一等地には露出補正ダイアルが設置されているのが大変好ましい。
下位機種ではオートモードレバーを持つ。
モード切り替えは独特で、絞りリングを「A」にすると絞り制御がオートになり、シャッターダイアルを「A」にするとこれがオートになる。オートからダイアルセットすることで優先され、共にオートだとプログラムオートになるのだ。
このやり方は新発明ではなく、かつてミノルタXDというカメラが採用したやり方だ。
筆者は、好きな操作だが、しかし実用上は、マニュアルとオートの切り替えを失敗しやすいのが気になる。
かつてニコンFE2使用時に、シャッターダイアルを250分の1秒からオートに切り替えるのに延々回してセットしなくてはならず、しかも4000分の1秒とオートが隣り合わせなので、よく間違えたのである。
したがって、ニコンFA、F4のようにモード切り替えレバーでセットできれば便利だ。
ここまでレンズ交換式のカメラ操作を見てきた。
筆者はソニー、富士フイルムの操作でレンズに絞り環があるのが最も好ましいと考える。
しかし、この操作性は実は高級コンパクトカメラで各社が採用しているものだということに触れたい。
ソニーのRX-1はフルサイズセンサー搭載のコンパクトカメラである。
このように今まで述べてきた条件が全て整っている。
しかもユーザー設定モードも専用ボタンがついている。
レンズ交換式カメラと高級コンパクトカメラの操作性は全く同じなのが望ましいのだが、かつてはレンズとボディの連動機構が必要で違うのが当然のように思えた。
しかし、マウントの連動機構も全て電子化された現在、変える必然性は無い。
しかし、各メーカーでそれに気がついているのは、ソニー、フジくらいではないだろうか。
ニコンなんかは、カメラごとにいちいち操作性を変えてくるのでいい加減にしてほしい。
特にニコン1シリーズは、1インチセンサーという、最近の高級コンデジのトレンドを先取りしており、もっと認められても良い機種なのだが筆者の購入したV1、J1では露出補正のみならず、普通に撮影することすらサブメニューに入らないとできなかった。
この操作性の劣悪さが不人気の原因だったと見ているが、メーカーはそれに気がついているのだろうか。
最近発表されてまだ発売されていないニコンDLというカメラがこれだ。>と書いたらなんと驚くことに開発中止のアナウンスがあった。
ニコン1のボディとレンズとして出てくれば、他社の高級コンパクトよりもレンズ交換式で優れているのに。
こちらはニコン1J5。これ意外に売れているらしい。
DLの操作性でニコン1V4を出して欲しい。
これはソニーやフジの高級コンデジと同じように、露出補正ダイアルが一等地にあって、しかもレンズ側には絞り環にも使えるコントロールリングを備えている。
ニコンでは今はなきPシリーズ、キヤノンGシリーズも含め、高級コンデジにはレンズ側にもコントロールリングが付き、右肩に露出補正ダイアルがつくのが標準的になっている。
軍艦部には液晶はなくとも、デジカメなので背面液晶で事足りる。結局、銀塩カメラ時代の操作性を取り戻した形だ。
最後に整理するとこうなる。
1.絞りリングはレンズ側につけ、電子ダイアル化
2.露出補正ダイアルは右手親指の単独で操作できる位置。電子ダイアルでも可。
3.シャッターダイアルはあっても良いが、電子ダイアルでも可。露出補正操作と両立できることが重要。
4.モードダイアルはあると便利だが、ボタン+電子ダイアルでも可。ただしユーザー設定モード呼び出しは一発でできる。
5.それ以外の機能設定は現状でも可。背面モニタをうまく活用。
筆者の考えるデジタルカメラの操作性は、結局、ニコンF4という、かつてダイアル式アナログカメラの終焉期に現れたダイアル類を備え、デジカメ操作を踏まえた、メニュー選択用電子ダイアルとを備えれば良いのであった。
ニコンDfもF3やFAではなくその完成形のF4を真似すればよかった。そしてニコンも絞り制御がメカレバーではなく電子制御になったのだからEレンズにはぜひ電子絞りリングを搭載してほしい。
こうしてみるとニコンFマウントはまだまだいけるのではないだろうか。
あるいはソニーEマウントのような方向かもしれないが、新しいレンズだけでなく、Fマウントレンズアダプタにも絞りリングをつけたらそれで良い。
ニコンのカメラ、特にミラーレスの操作性がなんだか変になってきそうで心配していたら、キヤノンのミラーレスも変わりだしたので、改めて各メーカーの操作性を確認して見たのが今回のブログの発端。
ソニーやフジのカメラ評価が上がっている理由は、操作性の良さにあるのかもしれないと感じていたが、その通りだった。ニコンはせっかくDfのようなカメラを出したのだから、ただの懐古趣味で終わらせないでほしい。