naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

フィルムスキャナ考-3(1999)

フィルムスキャナ考-3

6.フィルムスキャンの実際

それでは実際にフィルムスキャナで写真を読みとるとどうなるのか。スキャナの性能に迫る!?。

6-1.スキャンデータは情報量が命

順光で色も豊富な画像は、どんなスキャナでも大体うまく読める。しかし、写真として考えた場合、退屈であって、もっと劇的な写真というのは、色や明るさが偏っていることが多い。
次の画像をご覧ください。

oze941017-rgb


a.ノーマルでスキャン

oze941017-srgb

b.自動色調整でスキャン


oze941017-rgb-a

c.aにPhotoshop自動調整


oze941017-rgb-m

d.aに手動で各色ガンマ補正



この写真は「尾瀬の記憶」コーナーの1994年10月17日の写真である。今回改めてNikonLS-2000でスキャンした。大きさが小さいので少しわかりにくいがダウンロードに時間が掛かりすぎてもいけないのでご容赦。

まず、a.がノーマルにスキャンしたもの。ずいぶん暗いが素材として十分な階調を持っている。b.はニコンカラーマネジメントという付属のソフト補正を掛けたもの。暗いのでわかりにくいが少し緑が強くなってコントラストがあがっている。

実はこの写真は紅葉バックで西日の射した白樺を撮ったのでバックは暗い。夜のような写真なのでふつう自動だとしらっちゃけて、西日の赤みを補正しようと青緑っぽく補正されてしまいがちだがこのソフトは夜景と判断したのだろうか。いずれにしても原版とはほど遠い。

c.はPhotoshopの自動レベル調整を使ったものである。見ようによってはかなりいい線いっているが、原版のイメージではない。ただレベルヒストグラムを見てみるとこの中では一番平均化されているはずだ。

d.はPhotoshopのガンマ補正を各色で分けて行った。原版そして自分のイメージに合わせるため手動で行っている。従ってヒストグラムで見ればかなり偏っている。この写真の場合、西日と紅葉で赤方向に偏っていて、白樺以外はかなり暗めだが、これが正解である。

以前「フィルムとスキャナ」で申し上げたがネガカラーのプリントは、c.のようになり、ポジ(スライド)ならd.のようになる。(もっとも撮影時の露出も正しい場合だが)

結構面倒と思われただろうか。注意したいのは一見だめそうなノーマルスキャンでd.のように補正できるだけの情報量を持っていると言うこと。はじめからメリハリの利いた画像のc.やb.(これはまだまし)では補正しても階調飛びを起こしているのでd.まで持っていけないのである。
ただでさえ平均的な(平凡な)写真からはずれていれば、その補正をソフトが自動でやれと言うのは不可能。それならばできるだけ情報量豊富な絵を取ってきてほしいのだ。LS-2000はノーマルでもソースが取りきれない場合、12bit出力やマルチスキャン、アナログゲインアップといった機能があって、特に暗い画像も救済できるようになっている。(後述)

6-2.スキャナ解像度はどこまで必要か

画素の話でもふれたように、スキャンした画像を何に使うかで必要な解像度は変わる。フィルムスキャナの解像度はフィルム上での値である。
たとえばNikonLS-2000の場合、最大解像度2700dpi(ドットパーインチ)であり、2592x3894=10093248ピクセルの画像が最大である。一方フィルムサイズ(24x36ミリ)をA4版(余白を見て180x270ミリ)にすると、7.5倍に拡大することになる。
よってA4プリンタ解像度で2700/7.5=360dpiとなるが、これも前回話したようにインクジェットプリンタでは200dpiもあれば十分である。フィルム上では200x7.5=1500dpi。
実はニコンのスキャナドライバのデフォルトは1350dpiであって、このあたりの解像度が標準として設計されているようだ。ただ商用印刷の場合は150線x2=約300dpi必要とされている。
次のサンプル画像をご覧ください。


h990502-i

e.全体画像

h990502s-1350


f.1350dpiスキャン画像

h990502s-2700


g.2700dpiスキャン画像

阪神電車の風景」で使う予定の淀川鉄橋での写真です。これのナンバープレート周りを実際のスキャンサイズで何も手を加えずに表示してみた。

f.1350dpiの大きさに合わせてg.2700dpiも50%表示にしてある。違いがわかるだろうか。
やや強めのJPEG圧縮をしたためもあって、f.のナンバーの周りがあれているが、圧縮しないか弱めの圧縮ならば、ほとんど見分けがつかないだろう。パーソナルユースの場合は1350dpiで十分だ。

ただ、一方でスキャンは2700dpiで行って、あとから1350dpiに縮小すると、階調が滑らかになる効果が期待できる。ソフトにもよるが、4つのドットが一つになる際、平均化されるからである。このメリットは以外に大きい。

余談だが35ミリフィルムに比べブローニーフィルムや大判が優れているのは解像度ではなく(なぜならカメラレンズの解像度は中版レンズの方が35ミリ版のそれより劣るのである)、階調の豊富さなのである。この効果ににている。
フィルムスキャナの性能を代表するかのように言われるスキャン解像度も、結局2倍の差でもこの程度であるから、2700だ、2800だと気にすることはない。最近は4000dpiなんてのも出ているがここまでくるとデータ量も膨大でオーバースペックと言ってしまおう。ただ言ったようにこれを縮小して階調面に生かせば大いに意義のあることと思われる。

6-3.フォーカス精度は見落としがち

上の写真を見てもしかしたら「ピントが甘い」と思われたかもしれない。事実、なかなかピントがあってぶれもない写真を撮るのは思いの外難しいのだが(カビネでは良くても全紙にのばしてシャープな写真はなかなか)上の写真は(自分で言うのも何だが)スライド映写機で投影して全倍程度にのばしてもピントのきていた写真である。

ちなみにフォーカスはNikonF5のAF・・・;。しかし何度スキャンしてもこれ以上良くならなかった。これはスキャナのAF精度の問題と結像光学系の問題がありそうである。AFはおそらくフィルム面の反射を利用していると思われるがセンサの調整や駆動部の応答、フィードバックのかけ方を想像すると調整がシビアで狂う可能性がありそうだ。

一方、機能の中にマニュアルフォーカスもあるのでAFの出た目から前後にずらしてみたが結果はAFが一番良かった。この結果を信じると、単にピント合わせの問題ではなく、結像光学系の収差、フレアなどが問題となってくる。こうなるとユーザー側では対処のしようがない。

雑誌の比較記事を見ると、特にLS-2000のAF精度が悪いわけではなさそうだが、前のクールスキャン2も悪かった。ただクールスキャン2は初めは良かったので、途中で狂ったのかもしれない。ともかくスキャナのフォーカス精度は重要なのになかなか正当な評価がされていないと思う。案外マニュアルフォーカスの使いやすいもの(初代クールスキャンのような)の方が良いかもしれない。

なお、このくらいのぼけはPhotoshopの「アンシャープマスク」(シャープにする機能)でほとんど直ってしまう。ただ、解像度にこだわってもそれ以下のフォーカス精度では、いくらソフトで補正しても元情報以上のものにはならないので、やはり問題である。

(以下次号;)

1999年10月17日