naka-maの心言・2

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カメラの行方-3(NikonFE2)

カメラの行方-3(NikonFE2)

今回は長年愛用してきたニコンFE2についてです。

NikonFE2

FE2
FE2-1
FE2-4
FE2-3
FE2-2
FE2-180
FE2B-1
FE2B

Nikon FE2 主要諸元

形式

電子制御式35ミリフォーカルプレンシャッター式一眼レフレックスカメ

シャッター

電子制御式縦走りチタン幕シャッター
自動露出 8~1/4000秒(無段階)
マニュアル B・8~1/4000秒
シンクロ 1/250
機械式 1/250、B

ファインダー

アイレベル・ペンタプリズム
視野率 約93%
倍率 0.86倍(50ミリレンズ無限大時)

ファインダースクリーン

ミラー側より交換可能(3種類)

フィルム巻き上げ

手動 一括巻き上げ
モータードライブ装着時 毎秒3.2コマ

露出機構

露出モード

絞り優先オート/マニュアル

測光方式

TTL中央部重点測光

測光範囲

EV1~18(ISO100)

露出計

シャッター速度指針式(光学読み取り絞り値)

電源

1.55V銀電池SR44(G13)型 x2

大きさ・重量

142.5x90x57.5ミリ・550グラム

価格

75000円(ブラックボディー79000円)

発売年月

1983年4月

1.購入年月日    1983年11月27日/ブラックボディ1988年?(中古購入)
2.購入場所     横浜西口(カメラのきむら)/ブラックボディ横浜西口(カメラのきむら)
3.シリアルナンバー 2014156/ブラックボディ2152123
4.購入動機 

こんなことを告白?するのも恥ずかしいが、大学四年の研究室が希望の材料力学ではなく、じゃんけんで負けて流体力学になったことで、少し落胆していた。中学の時にまねごとで自作天体望遠鏡の設計をしたりしてから、光学機器の設計がしたくて工学部を選んだ身としては、研究室に残るより、就職しよう、という気になっていた。今にして思えば大学研究室の分野が何であれ、良かったのであるが。
で、天体望遠鏡とカメラの光学機器メーカーで、数社当たったのだが、いろいろ条件面などで迷っていたところに、あるカメラが発売になった。それは自動露出全盛のスペック競争の時代に、シャッターそのものの改良で1/4000秒と1/200秒シンクロをメカシャッターで実現した「NikonFM2」であった。通常のカメラは1/1000-1/2000秒、1/60-1/125秒シンクロであるから、1-2段高速になったことになる。シャッター幕がなんとチタン合金をエッチングハニカムパターン状に肉抜き(0.01ミリ単位で)したもので、そうまでして幕速を上げたかったのか!と見る者を感動させる。でもカタログスペックは1/4000秒と1/200秒シンクロ以外何もない。この姿勢が気に入ってしまった。「NikonFE2」は「FM2」の絞り優先オート版で、1/4000秒、1/250秒シンクロを達成した。特に特徴もないカメラであったが、シャッターに憧れて、いつかこのカメラを買おうと、入社時にもらった真新しいカタログを見て決めたのだった。
FE2は1988年にF-801AFが出た時点でディスコンになり、意外に短命な歴史を閉じた。同時にディスコンになった上位機種FAよりも、シンプルな点が評価されて中古市場でも相当高値が続いた。高値になる直前にサブ機としてブラックボディを中古購入した。それでも最初に新品を買った値段と大差なかった。

5.使用雑感

「2」でお気づきのようにもともと「FM」「FE」があった。ニコンは「Nikon」ブランドはF、F2(いわゆるヒトケタ)に使い、普及タイプは「Nikomart」(ニコマート。スーパーにあったなあ、この名前)であった。ところがレンズが「Ai」方式になったときにブランドをNikonに統一した。「FM」「FE」はそのころのカメラなのでNikonなのである。それぞれ、「マニュアルニコン」「シンプルニコン」のキャッチフレーズでニコンブランドと相まって売れていた。しかし、形を見ればそれは「OM-1」「OM-2」を多分に意識した対抗馬であることがわかる。オリンパスが個性的なカメラでややもすれば嫌われる操作性なのだが、ニコンのはいかにもオーソドックスで、ニコン党にはそこが良かったのだろう。しかし、中身は十分個性的で、オリンパスとともに僕の琴線にふれるものがあった。

5-1.操作性

良くも悪くもオリンパスと対照的な印象だ。シャッターダイアル、露出補正、感度設定ダイアル、巻き戻しボタンなど、オリンパスが特殊だったのに対し、すべてオーソドックスな位置にある。オリンパスに慣れていた僕にとっては、不便に感じた。露出補正ダイアルは巻き上げクランクに同軸に配されており、容易に動かないようにロックされているが、このロック解除ボタンが小さすぎて、ダイアルに近すぎて、爪の先で押すようなことになる。そして、いったんロックを解除するとクリックもなくするする回ってしまうので、暗がりでは補正値がわからない。オリンパスOM-2はロックが無くクリックがあり、補正0位置が白い線が横を向いたところなので暗がりでも操作しやすい。さらにシャッターダイアルの中に「A」(絞り優先自動モード位置)があり、1/4000秒の隣なのだ。ファインダー表示まで隣り合わせだ。何回うっかり1/4000で撮ったことか。(A位置から抜けるときはロックがあるが逆はない)オートからマニュアルに切り替えるときもいちいちシャッター速度をセットし直すことになる。もっともこれはニコンに限らないことで、オリンパスの良さが際だっていた。ちなみにニコンは次に出したニコンFAではモード切替ダイアルが独立して、良くなった。(F4も)
また、意外に見落とされるのがAEロックだ。メインの被写体で露出を計り、ロックして構図を変えて撮影することができる機能で、露出補正の最も簡単なやり方である。FE2はAEロックがセルフタイマーレバーを通常と逆に倒すと機能する。レンズを構えた左手の薬指で操作しやすく、押しボタンではないのでホールドしやすいのがみそだ。

5-2.撮影状況

巻き上げレバーの形状はとても指当たりが良く、巻き上げトルクが軽くて、小刻み巻き上げは出来ないものの、非常に良い操作感であった。レバーは格納状態から巻き上げ前の予備角30度まで引き出さないとシャッターボタンがロックされて切れない。これもメインスイッチが切れていてもシャッターが切れるオリンパスに対し対照的である。慣れの問題で最初はとまどったが、慣れると安心感がある機構である。
シャッター音は甲高く、決して良い音ではないが、シャッターボタンを押すときのストローク、押し下げ荷重、切れの良さが、写真を撮る感覚を与えてくれた。シャッターそのものはチタン膜による質量軽減でショックが少ない。しかし、ミラーのショックがかなり大きくせっかくのシャッターがこのおかげでえらく「がちん」という感じになっていて損をしている。
このシャッターは、チタン膜が薄くてかなり華奢で、ニコンのカメラにしては故障が多かったと聞いている。僕自身一度シャッターのかしめがはずれ、シャッター膜が一部垂れ下がって画面がけられた状態で撮影してしまった。こういうときに限って、結婚式披露宴だったりする。全く面目丸つぶれだった。
ファインダーは明るく、それでいて空中像のようなことはなく、十分ピントとぼけの確認が出来る。合致プリズム精度も高いようで正確なピント合わせがしやすい。
ともかくモード設定を決めて、撮影にはいると非常に気持ちの良いカメラで、しっかり感もあってニコンらしさを感じた。ペンタ部のへこみが写真に見られるが、これは八ヶ岳権現岳山頂で岩の上に落下させたときのもので、それでも故障しなかったことはすばらしい。
文章にすると文句の方が多いが撮影時にはそんなことは感じないカメラだ。自分で設計するようになって思うのだが、こういう操作感の良さはオリンパスは設計思想の勝利だとすれば、ニコンのは伝統設計、製造技能の勝利だ。巻き上げ感触がこれほど違うのは加工精度、材質、ギア比、ボールベアリングなどが考えられるが、軽さはまだしもスムーズさというものはやはり製造技能によるものだ。ピントリングしかり、シャッターボタンしかり、レンズ着脱しかり。

5-3.レンズ性能

同時に50ミリF1.8と24ミリF2.8を購入した。いわゆるニッコールレンズだ。オリンパスのズイコーレンズにやや落胆したので、大いに期待した。結果はなるほど、良いところもあった。
特に逆光時のフレアー、ゴーストは格段に少ない。クリアな像が得られる。ただ無くなりはしないのでぎりぎりのところでの微妙な差といおうか。開放時の周辺減光、コマ収差も少ない。星ではやはり開放では無理だが、一段絞れば良くなる。ニッコールといえば解像度だが、50ミリに関しては噂以上の切れだ。山で撮った写真を引き伸ばしたとき、遠方の岩や登山者がシャープに見える。一方、24ミリは期待ほどではなかった。これはいつも画面右下が甘くなるので、もしかしたらレンズの偏心が起きているのかもしれない。一度チェックに出そうと思いながらそのままである。それでも十分な写りをするレンズで愛用してきた。24ミリは僕の目にあった画角でもっとも使用頻度が高い。
ところでニコンレンズマウントを変えないことで有名で、不滅のFマウントであるが、実はAi(開放F値自動設定)以前のレンズはこのFE2には着かない。下位機種はともかく、中位機種で着かなくなったのはFE2が初めてである。以降、Fひと桁を除き、着かなくなってしまう。もっとも昔のレンズがなければ何の不都合もないが、マウントが共通なだけに互換性確保も大変である。カタログには装着可否の表があって結構複雑である。メーカーの品質保証もかなり大変だと思う。

6.所感

OM-2と比較しても地味なカメラで、しかも一見すると前に機種と変わらない外観でありながら、コア技術のシャッターが一新されていて撮影能力は一気に上がっている。この会社は底力があると信じたが、こういう姿勢は経営側が望んだことではなく、技術陣の良心によるものだったようである。僕も自分の設計の中に基本要素の性能向上を盛り込んで、それでも顧客には高性能が鼻につくようなことはないような製品を作りたいと願って、今までもやってきたつもりだ。シャッター何かよりもっともっと地味なものをやってきたが、思想は同じなんだと自負している。ともかくFE2は僕にとって、設計者としての人格性格を方向付けたカメラとして特別な思い入れがあるのである。
そんなFE2であるが、1998年11月獅子座流星群観測の夜に巻き上げが故障。修理に出すものの、ディスコン後10年経過して保有部品もないとのことで、けんもほろろに送り返された。FM2は現役で、おそらく共通部品であるのに、故障個所の分解確認もせずにそういう対応をとったことに憤っている。しかし、新しいカメラも増えて出番も減っていたので、このカメラは自分もここらで引退と言っているのか。ちなみに、ブラックの方は健在である。

200.2.25