naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

ぶれ補正レンズ(4)(2001)

ぶれ補正レンズ(4)

そして「手ぶれ」しか補正しないという仕様である。
僕は軽量三脚のように「ぶれ」やすい三脚の振動も補正するモードが必要だと思う。そうすることによって今は限られたユーザーにしか役立たない「手ぶれ補正」がもっと幅広く使われるようになると考える。

まず手ぶれ補正は、ユーザーがどの状況で使うことを想定しているかだが、具体的に考えてみたい。

一般に手ぶれの限界速度は1/焦点距離 秒といわれている。これを真に受けると、広角で1/30秒、標準で1/60秒、望遠で1/250秒あたりが考えられる。

ISO100で考えると、
快晴の日中、EV14=F8・1/250秒
昼の曇天、EV13=F5.6・1/250秒
朝夕方の日向、EV13-11=F5.6-2.8・1/250秒
朝夕方の日陰、EV10-8=F2.8-1.4・1/125秒
室内、EV6=F1.4・1/30秒

自分の記憶に頼った値なので、ちょっとあやしいがこんなものだろうか。

F4、1/250秒がEV12だから開放絞りがこのくらいのズームレンズでも屋外昼間の撮影ではほとんど手ぶれする事はない。ここから2-3段暗いときに手ぶれ補正が発揮されるのだから、EV9-10ということだが、それは朝夕方の日陰の条件で、それも日没までの1時間ほどという条件だ。しかし室内の撮影には足りない。

ほとんどの手ぶれ補正レンズが200ミリ以上の望遠レンズなのは、手ぶれ限界が1/500秒なので日中も手ぶれするおそれがあるからである。
しかし、300や400ミリの超望遠は使う機会は少ない。ユーザー別で言えば、スポーツ、レース、飛行機などだろう。鉄道、風景でも使うことはほとんど無い。これらのジャンルの写真は速いシャッター速度が必要なことが多いので、手ぶれしないだけでは困ることがおおい。作例でもよく見るのは、レーシングカーの流し撮りである。一脚に載せての撮影は、手ぶれに近い振動なのだろう、手ぶれ補正は有効なようだ。
このように今の手ぶれ補正レンズはスポーツマスコミ関係のプロ向け、という位置づけのようだ。特にキヤノンの超望遠レンズ群は全てがISになっており、ユーザー層の絞り込みと、画質への自信の現れである。だが。

何だか矛盾していないだろうか。カメラ込みで5キロもあるレンズを手持ちや一脚で使うユーザーは、スポーツマスコミプロであって、彼らは被写体ぶれも嫌う。だからこそ開放絞りの明るいレンズで高感度フィルムも使う。有効なのは流し撮りくらい。

ほとんどの人はそういう使い方はしないし、なにより僕は100万円を超えるレンズは買う予定はないから、興味がない。しかし手ぶれ補正の技術は使ってみたい。自分が撮影する状況下でぶれが問題になるのは、絞り込んでの風景撮影だ。

風景写真では、奥行きのある被写体が多いから、被写体深度を稼ぐため絞ることが多い。また開放絞りでは、周辺光量不足や球面収差、コマ収差などが大きく出るので、細密描写のために絞る。そしてフィルムの粒状性のために低感度フィルムを使う。従って日中の撮影であっても1/125-1/30秒のシャッター速度になる。ぶれやすい条件ばかりだ。

一方、登山など自分で荷物を担いでの移動が多いから、極力軽量な道具が欲しい。レンズは画質さえ良ければ開放絞りが多少暗くても、軽い方がよい。三脚も長時間露光のためには持つが、カメラと同等以上の重さが必要になるため、必需品とはいえおっくうだ。
三脚使用時のぶれ補正が出来ない技術的問題がセンサにあるのか制御にあるのか不明であるが、微振動が吸収できる柔構造の三脚?があれば手ぶれの振動に近くなるから、冗談ではなく「手ぶれ補正専用三脚」なんてあったらよいかも。

こう考えれば、風景写真に適した「ぶれ補正レンズ」は、その技術を投入する条件が揃っていることがわかる。

そこで僕が欲しいのは、

・無理のない倍率の高画質ズーム
開放絞りはF4程度
・徹底的に軽量化=カーボン鏡筒などで、500g程度
・「手ぶれ」ではなく「ぶれ」補正=軽量三脚のぶれ補正モード付き

具体的スペックは

・24-70ミリ/F4(例えばAiAF-S VRニッコールズームED24-70/4D)
・70-200ミリ/F4(例えばAiAF-S VRマイクロニッコールズームED70-200/4D)(マイクロでなくても良いが)

これでどうだ。
このシステムならレンズが軽量なだけでなく、三脚も軽量化できるので、全体システムの重量が大きく軽減できることも重要だ。当然予算も軽減できる。
しかも一眼レフデジカメにつければ35-105、105-300ミリ相当になるのだ。

安い標準ズームは使ってみてろくな写りをしない。だがニッコール35-70/2.8を使ってみてわかった。きちんと作ればちゃんと出来るのに、やらないだけだ。今のレンズのラインナップは、開放絞りの明るいものは高画質、暗いものは安いだけ。でもレンズの重さや価格を考えると、それはユーザーが望んだことではないと思う。高画質標準ズームが開放絞りの明るいレンズだけというのは芸がない。最近キヤノンが70-210/F4Lを出したがこれなんて何でISではないのだろう。
「ぶれ補正」レンズは硬直化したレンズシステムを改革する可能性がある技術だと思う。

今の若者なんぞカメラの画質なんてわからんぞ。「写るんです」にプリクラ、ケータイデジカメだもん。画質にうるさくて、体力が落ちてきている中高年ユーザーはもう無視できない大きな購買層だ。何に使うか分からない高倍率ズームより、ぶれ補正高画質ズームでいこう。本当にこんなのが欲しいなあ。中高年ユーザーのなりかけとして;)

2001年1月23日