naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

野球漫画(1999)

球漫

今年も阪神タイガースは最下位に終わり、無事?野球シーズンも終わりました。今シーズンは一度は首位に立ったりして、楽しませてもらいました。でもこの時点でマスコミが、優勝か?等と騒ぎ立てて、にわかファンが大騒ぎしたのがいけなかった。真の阪神ファン阪神半疑;)でもストーブリーグでだけ話題になるのは止めてよ、大豊、中込・・・。

さて、以前書きましたが、僕が野球に興味を持ったのは阪神甲子園の高校野球と、はずかしながら、「巨人の星」でした。「巨人の星」は、我々の世代では言わずと知れたスポ根(スポーツ根性)劇画であったが、僕が好きだったのは前半の高校時代くらいで、特に後半大リーグボール2号(消える魔球)以降は陰気なストーリーで好きではないです。
この時、主人公、星飛雄馬のライバル、天才花形満はぼんぼんで、大リーグボールを打つし、女性ファンも多く挙げ句に姉ちゃん星明子をものにするはで、どちらが主人公か分からないくらい優遇された存在だったが、なぜその間阪神が優勝できなかったか不思議です。

でも本当に野球漫画で好きなのはちばあきお「キャプテン」月刊少年ジャンプ)「プレイボール」(週刊少年ジャンプ)でした。この漫画は、さすがに知っている人は、少ないでしょうが地味ながら意外に人気があった漫画でした。僕がこれを知ったのは1974年頃でしたが自分でも漫画を書くようになった時期でしたから、そう言う作者の目で漫画を見るようになっていました。ストーリーは、

東京の下町、墨谷二中に転校してきた谷口タカオは、野球の名門青葉学園の補欠だったが、墨谷の野球部で青葉のユニフォームを着たばかりに、過度の期待を受け、それに恥じないよう期待に答えようと隠れて練習に励み、いつしか実力を身に付けた。しかし、急にキャプテンに任命され、これに戸惑いながらもやはり努力で成し遂げ、そして青葉学園に勝って全国中学野球大会で優勝する。「キャプテン」はこの後、後輩の丸井、イガラシ、近藤が墨谷二中のキャプテンを引き継いでいく話である。あくまで墨谷二中野球部が舞台で主人公が変わっていく物語だ。
さて、「プレイボール」は、「キャプテン」谷口タカオの高校編である。青葉との決戦で右手人さし指を骨折し、指が曲がった谷口は墨谷高校でサッカーを始めたが、野球が忘れられず、サッカー部でも努力の末レギュラーになったにもかかわらず野球部に転部する。この弱小野球部も谷口の頑張りに触発され地区予選三回戦で強豪東都実業相手に善戦。このとき曲がった指でフォークボールを投げる投手谷口が誕生した。その年、一年生でキャプテンになった谷口は徐々に野球部の強化をはかり、翌年は準々決勝まで進出した。三年の春、後輩丸井、イガラシが揃いいよいよ甲子園へ、と思うものの練習試合で前年甲子園出場の谷中高校に完敗、しかしそのショックにもめげず谷口ら墨谷高校は再始動する。ここで話は終わってしまう。

実に淡々とした話で、「ドカベン」のような甲子園何連破などと言った華やかさとは無縁のなかで当時の読者の支持を集めたのは、普通の学校の野球部が努力によって名門校に打ち勝つところでした。
また普段の練習風景から丹念に描かれ、試合でも劣勢から反撃の流れまでもがわかるようにリアルに書かれていました。
それだけではない。もともと弱小野球部員がいきなり特訓した時のキャプテンに対する反発、不信、キャプテンの自覚、責任という心理描写が見事。そこまでしても最後は負けてしまう無常さ、実際世の中そんなものだ。そしてそこから立ち直る根性。勝つだけの主人公より、負けても立ち上がる主人公の方が好きなのは僕自身のひが目でしょうか。

さらにちばあきおの絵がいいのです。谷口なんか初期の磯野カツオだ。イガラシは猿だし。ともかくとことん簡略化された絵で、劇画や少女漫画の細かさにくらべ余りにも簡単なので絵が下手と誤解されそうですが、そうではない。野球をする選手の動きが実にしなやかだし、フォームもきれいなのです。今でこそましだが当時の水島新司の絵よりよほど野球らしい。
デッサンもデフォルメされているが正確なのです。ちなみに紙を裏から透かしてみて、絵がまともに見えたらデッサンは正確と言って良いでしょう。少女漫画や最近の若手の漫画家の絵は裏から見るとたいてい人の体が歪んで見えます。おためしあれ。

ちばあきおちばてつや実弟でしたが、1984年に自殺してしまいました。大変ショックでした。自分の作風が時代に合わなくなったことで悩んでいたようです。声高に根性だの言わなくても朴訥とした中で、努力と諦めない心が滲んでくる。これに共感できるのも時代に合わなくなった証拠なのでしょうか・・・。

1999年11月11日