naka-maの心言・2

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カメラの行方-5(NikonF-601AF)

カメラの行方-5(NikonF-601AF)

カメラショーへ行って来ました。銀塩カメラの健全な発展がまだまだ続いて欲しいものです。
さて、今回からAF一眼レフに話題が移ります。

NikonF-601AF
F601-1
F601-2
F601-P
F601-S

Nikon F601AF 主要諸元

形式

電子制御式35ミリフォーカルプレンシャッター式一眼レフレックスカメ

シャッター

電子制御式縦走りアルミ幕シャッター
プログラム/絞り優先自動露出 30~1/2000秒(無段階)
シャッター速度優先/マニュアル 30~1/2000秒
シンクロ 1/125
マニュアルのみ B(電子式)

ファインダー

アイレベル・ペンタプリズム
視野率 約92%
倍率 約0.75倍(50ミリレンズ無限大時)

ファインダースクリーン

固定(全面マット)

フィルム巻き上げ

自動(巻き上げ、巻き戻しとも) 
CH(高速連続)約2.5コマ/秒
CL(低速連続)約1.2コマ/秒
S(1コマ)

露出機構

露出モード

マルチプログラムAE(PM)
プログラムAE(P)
シャッター速度優先AE(S)
絞り優先AE(A)
マニュアル(M)

測光方式

TTL5分割マルチパターン測光
中央部重点測光
スポット測光

測光範囲

EV0~19(ISO100)
EV4~19(ISO100)=スポット測光

露出計

ファインダー下部液晶表示
(露出モード、シャッター速度、絞り、マニュアル時露出インジケータ=±1EV、1/3EV刻み など)

オートフォーカス

方式

TTL位相差検出方式
(アドバンスAM200)

モード

フォーカス優先シングル(S)
フォーカス優先コンティニュアス(CF)
マニュアル(M)
S、CF時予測駆動フォーカス自動切り替え

AF検出輝度範囲

EV-1~19(ISO100)

電源

6Vリチウム電池CR-P2型

内蔵ストロボ(スピードライト)

ペンタ部組み込み。手動ポップアップ
GN13(ISO100・m)、28ミリレンズをカバー

大きさ・重量(約)(電池別)

154.5x100x67ミリ・660グラム

価格

85000円(クオーツデート。消費税別)

発売年月

1990年9月29日


1.購入年月日 1994年7月?
2.購入場所 横浜西口(ヨドバシカメラ
3.シリアルナンバー 2241762
4.そのころは

このカメラはオートフォーカス一眼レフである。何を改まって、と言われるだろうが僕にとって初めて持つAF一眼レフである。

4-1.AF一眼レフ誕生

AF一眼レフは古くから開発されていて、試作品をのぞく本格的なものは、僕の知る限りではペンタックスME-Fである。1982年だったと思う。レンズにAFセンサー、モータ、電源を持つものがいくつか出てきた頃で、後で有名になったハネウエルのセンサーを使ったものがあった。が、ペンタックスはボディにセンサーを持って前後のコントラストを検出する独自の方法で、AFシステム化を狙って、マウントも共通であった。元々最軽量カメラなので大きさは小さく、性能さえ伴えばブレイクしたのではないだろうか。

ほぼ同時期にニコンF3AFが出たがこちらは交換ファインダーにセンサーを持ち、独自の位相差検出方式で連写に耐える性能を誇った。AFレンズも80ミリと200ミリで他社のようなズームではなく、プロ使用を意識していた。レンズ内モーターで将来の超音波モータを意識していたのではないか。この頃の日経メカニカルにはニコンが超音波モータを開発中であることが表明されている。

4-2.αショック

ペンタックスニコンキヤノンもレンズ内モータ、ボディ内センサで行こうとしていたその時、ミノルタα7000が発売された。1985年だ。ボディ内センサ、モータで、シャフトでレンズを動かす、この方式はレンズが安く、小さくできるので、同時に多くの交換レンズが出た。マウントも新規になり、ミノルタが本気になって出したことが伝わってきた。キヤノンは同時期にT80というAFカメラを出したが完敗。ニコンは量産に入ったカメラをお蔵入りにして開発変更した、という噂だ。

1986年にミノルタに追従したのはニコンF-501だ。ミノルタと同じボディ内センサ、モータであるが、マウントは変えず、F3AF用のレンズ内モータも動いた。これが後の超音波モータに対応する。今では信じられないが1987年春にはニコンF-401という、自社開発AFセンサ(501はハネウエル製)とストロボ内蔵でデザインも斬新、それでいて他社と比較してももっとも安い(ここが信じられない)というカメラを出した。何人かの知人、自宅の父用に勧めて買わせたが、残念ながら室内でのAFが遅く、僕が文句を言われた。

さて開発競争はオリンパスペンタックスが続くが、キヤノンは最後になった。1988年、周回遅れで出たキヤノンEOS650はレンズ内モータ、ボディ内センサで、あえて不利といわれたレンズ内モータでありながらコストを下げ、売値を他社並にした。AF速度では周回遅れのトップに立ち、逆襲が始まった。しかし、ミノルタも第二世代α7700iを1988年に出す。ミノルタのトップの座はハネウエル特許敗訴の頃まで続く。

4-3.第二世代AF一眼レフ

1988年は第二世代に突入した時期だった。第一世代から第二世代はたった3年の差だが、飛躍的にAFが進歩した。α7700iは3つのセンサーを並べたワイドエリアと動体予測AF(ニコンの予測駆動と同じ。被写体の移動速度を予測して先回りしてピントを合わせる!)が特徴だ。{信じてもらわなくても良いが僕はこの二つとも最初のα7000を見ながら思いついたのだった。}

ニコンはF-801で低照度に強く、高精度なAFを実現した。これは先のF-401のセンサ「AM200」の改良型「アドバンスAM200」である。もっと早く作ってくれたら401でクレームを受けることもなかったのに。801は世界初1/8000秒シャッターで、かつての1/4000秒シャッターの改良は続いていたのだった。このシャッターはハニカムチタンではなくアルミだったが、技術の進歩でこれでも耐えられるようになったという。
そして1988年末ニコンF4が発艦した。

4-4.F-601

ニコンのAF一眼レフはF-501,401ともにダイアル操作で、従来型の操作を踏襲していた。これは大変評価されるべきことである。AF一眼レフになって、ミノルタペンタックスはシャッター速度設定もボタン、スライドスイッチなどで液晶を見ながら設定するようになった。複数のキー操作を行うことで細かい機能設定を可能とし、カタログスペックが増えていった。一方、キヤノンは電子ダイアルを装備して(これは周回遅れ中のマニュアル機T90で始めたことだったか?)、ダイアル操作感覚を残した。

ニコンはF-801で液晶パネル+電子ダイアルを採用した。ニコンは、他社と違いAFレンズにおいても絞りリングを持っているので、電子ダイアルは基本的にシャッターダイアルの役目であった。モード切替など、ボタンを押しながらダイアル操作するとその機能に切り替わるので、一度設定してしまえば従来機の操作性で使えるのは良かった。

F-601は801の普及機で、操作性はほぼ踏襲している。共通の操作性は他社になく、大いに評価された。これはニコンにとって大きなアドバンテージだったが、何を思ったかその後継機F70とF50において、全く非共通な操作に変えてしまった。

一方キヤノンはEOS-1が1989年に登場し、サブ電子ダイアル(背面にある常時露出補正できるダイアル)を装備し、EOS100、5、55と操作系が統一されていった。キヤノンEOSは超音波モータの普及も相まって、トップの座を取ったのである。それは決して営業宣伝力だけでなく、商品にそれだけ魅力があったということであり、ミノルタのα7以降の迷走、ニコンの混乱を見れば、当然の結果だったのかもしれない。

4-5.購入動機

F-801、F-601,F-801s、F90は操作性が統一され、内蔵ストロボも持っている601はコストパフォーマンスにも優れたカメラとして評価していた。実際、学生時代の写真部の先輩、A氏にも勧めて、買わせてしまった。

それでも自分はFE2に満足していたし、AFもまだまだ不満であった。しかし、1993年結婚して、長女が生まれると、記念写真を撮る機会が大幅に増えた。同時に部屋の中での撮影がほとんどになって、ストロボをいちいちつけるのが面倒になった。さらに、奥さんも使えるカメラとして、コンパクトカメラ(ニコンミニ=目玉の親父の宣伝で有名になった)を使ったのだが写りは一眼レフにかなうはずもなく、全自動の一眼レフが必要になった。機は熟した。(勝手にそう思って、)ストロボ内蔵のF-601を購入した。

なお、常時装着している28-70/3.5-4.5ズームは、山で使うため先に買っていたが、ピントリングが軽く回りすぎてマニュアルでは使いづらく、601専用になっている。ちなみにこれは601用標準として並行開発されたものである。

5.使用雑感

性能から言って、作品作りにも十分使えるし、山に持って行くにもそこそこの重さなのだが、いつも記念写真用のネガカラー(コニカの200-400)が入っていて、一度もリバーサルカラーを入れたことがない。何故だろうと思うのだが、結局感覚的なものだ。

5-1.操作性

順番が皆さんの思っているのと違うだろうが、僕がもっともこのカメラで評価しているのが、標準規格のケーブルレリーズが使えることだ。この点だけでF5より偉い。こんな当然のことが何故かAF一眼レフになった途端出来なくなってしまったのだ。これはカメラ開発に携わる人たちの感覚のずれを感じずに入られない。朝夕の長時間露光、絞り込んだ風景写真、接写などにケーブルレリーズは欠かせない。それなのに機種毎に違う、しかも高い専用ケーブルを買わせようと言うのか。601はその点偉いのだ。(もっとも開発者はコストダウンのつもりで専用端子をはずし、レリーズソケットをつけたようだ。先頃発売になったF80でようやくレリーズの必要性に気づいたようなカタログ文句がある)

軍艦部は液晶パネルがつき、左側巻き戻しクランク位置に丸く配置された4つのモードボタンを押しながら、右肩の電子ダイアルを回して、モードを切り替える。何も押さなければシャッター速度、プログラムシフトダイアルになり、右手人差し指で押せる露出補正ボタンを押しながら電子ダイアルで露出補正が出来る。

なお、シフトボタンでストロボ機能を切り替えることが出来るが、分かりにくいので雑誌などで批判されている。しかし、一度設定すればそう変えなくて良いのでそれほど困らない。ニコン初の液晶パネル+電子ダイアル操作でありながら、完成された操作性はすばらしい。だが何故それを下手にいじってしまったのか、メーカー自身が自己分析できていなかった証拠である。

5-2.撮影状況

スペック、操作性は気に入っているF-601だが、記念写真に使うことばかりである。使う頻度は最近一番高く、従って最も信頼性のあるカメラなのだが、使ってみて何か頼りなさを感じる。これは

・巻き上げ、巻き戻しが遅い。

・その音が大きい、というより耳障り。

・シャッタータイムラグが長い。

というあたりだろうか。このカメラの誕生はF4より後だから、CPU速度は速いことが想像できる。実際、AF制御ではオーバーラップサーボ(CCDセンサの蓄積時間に、AF駆動も行ってしまい時間を短縮)など随分大変そうなことが出来るくらい高速CPUなのだ。

しかし、この時期は特に頭ばかり先行してしまって、肝心の手足が付いてこない感じでの機種が多く、ミノルタもAF速度にこだわるあまり、AFのオーバーシュートや精度低下が起こった。キヤノンも初期のEOSは速度優先、精度無視、諦め早し、のAFでほめられた物ではなかった。

その中ではニコンは比較的バランスのとれたAFだった。が、遅い、というレッテルを貼られてしまった。この印象は他社より大きい動作音も災いしていた。である一方で巻き上げ、巻き戻しはコンパクトカメラ並の上に騒々しく、特に静粛の要求される結婚式などではシャッターを切るのがはばかられたくらいだ。

またシャッターのタイミングがつかみづらく、シャッターボタンの半押しからレリーズの感覚が分かりにくいので結果としてシャッターボタンを押してから切れるまでのタイムラグが大きく感じる。このあたりはF-401の頃からそうだが、それまでのニコンの職人技が生み出す切れの良い感触が無くなったからだろうか。

一方、マルチパターン測光も初めて使ったが、ネガカラーで写す限り露出補正はほとんどいらない。ネガ濃度も安定していて、信頼性が高い。ストロボもTTL-BL(バランス)測光で、程良い光が当たる。このようにセンサと制御に関わる部分は基本性能が高く、機械的なカタログに現れない部分はコストダウンされた製品だ。

5-3.レンズ性能

28-70ミリ/F3.5-4.5ズームは、ニコンで初めて複合非球面(ガラスレンズにプラスチックをつけて非球面を形成)なので期待して購入した。標準ズームは初体験だったので便利に使えた。とくに広角28ミリから使えるのはありがたい。画質も良く、気に入って使っていたが、そのうちに集合写真のピントが悪いことに気が付いた。個々をアップにするのと違い、集合写真は顔の大きさが小さく、自分や興味のある人の顔を注視することが多いのでシビアに細部解像力を求められるのだ。さらにたいがい集合写真は室内だ。旅行の家族写真と違い、親戚が一堂に集まったり、クラス会をやったりするときがそうだ。だからストロボを炊くことになり、プログラムオートでは開放絞りになる。こういう悪条件ではよりシビアなレンズ性能が要求される。一方絞り込むとストロボの光が届かないので痛し痒しであるから、結局こういうレンズは使わない方がよい。集合写真がうまく写らないもう一つの理由は僕が大勢の前であがってしまうからでもあるが。

6.所感

よく練られたカメラで写りも良いが、ここぞ、というときの信頼性、操作感触に欠ける。それ以外のできが良いだけに惜しい。この後継機種のF70が巻き上げ、巻き戻しの高速、低音化を果たしたのだが、操作性をがらっと変えてしまって使いづらいと不評だった。

もっとも実際の使い方を見ればプログラムモード、マルチパターン測光でオート任せなのだから文句を言うのはお門違いかもしれない。しかし、いざというときの迅速な切り替え、わかりやすさ、は製造コストには響かないのだから、しかもその前は出来ていたのだから、きちんと考えて作って欲しいものだ。

ちなみに、2000年3月カメラショーでF80が発表になったが、ダイアルも多く残した操作は良さそうで、上位機種のF5,F100と共通化が図られており、なによりケーブルレリーズソケットが復活した。それで軽い。良いカメラになりそうだ。