naka-maの心言・2

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カメラの行方-6(NikonF4)

カメラの行方-6(NikonF4)

ちょっと息切れしてきました。でも言わずにはいられない。しっかりしてくれ!ニコンさん。

Nikon F4
F4-1
F4
F4-2
F4-3
F4-M


Nikon F4  主要諸元

形式

電子制御式35ミリフォーカルプレンシャッター式一眼レフレックスカメ

シャッター

電子制御式縦走り複合材、アルミ幕シャッター
プログラム/絞り優先自動露出 30~1/8000秒(無段階)
シャッター速度優先/マニュアル 4~1/8000秒(一段刻み)
シンクロ 1/250秒(X)
マニュアルのみ B(電子式)、T(30秒後機械式)

ファインダー

交換式(4種類)
マルチフォトミックファインダーDP-20(標準付属)
アイレベル・ペンタプリズム
視野率 約100%
倍率 約0.75倍(50ミリレンズ無限大時)
ハイアイポイント、視度調整機構付き、アイピースシャッター付き

ファインダースクリーン

交換式(13種類)

フィルム巻き上げ

自動(巻き上げ、巻き戻しとも) 
CH(高速連続)約4(5.7=F4S)コマ/秒
CL(低速連続)約3.3(3.4=F4S)コマ/秒
CS(静音連続)約0.8(1.0=F4S)コマ/秒
S(1コマ)
手動巻き戻し可能

露出機構

露出モード

高速プログラムAE(PH)
プログラムAE(P)
シャッター速度優先AE(S)
絞り優先AE(A)
マニュアル(M)

測光方式

TTL5分割マルチパターン測光(Ai連動)
中央部重点測光
スポット測光

測光範囲

EV0~21(ISO100)
EV2~21(ISO100)=スポット測光

露出計

ファインダー下部液晶表示
(露出モード、シャッター速度、絞り、マニュアル時露出インジケータ=±2EV、1/3EV刻み など)

オートフォーカス

方式

TTL位相差検出方式
(アドバンスAM200)

モード

フォーカス優先シングル(S)
レリーズ優先コンティニュアス(CF)
マニュアル(M)
CF、CL同時設定時予測駆動フォーカス自動切り替え

AF検出輝度範囲

EV-1~19(ISO100)

電源

単三アルカリ電池LR6 ×4(6=F4S)
F4SはNi-Cd使用可能

大きさ・重量(約)(電池別)

F4=168.5x117.5x76.5ミリ・1090グラム
F4S=168.5x138.5x76.5ミリ・1280グラム

価格

226000円(F4。消費税別)(発売時248000円)
239000円(F4S。消費税別)(発売時261000円)

発売年月

1988年12月

1.購入年月日 1995年6月
2.購入場所 横浜西口(ビックカメラ
3.シリアルナンバー 2600182
4.購入まで

実はNikonF4が発表されたときに新聞で写真を見てがっかりした。一眼レフの大きさはレンズマウントから想像できるが、図体が大きすぎて、巻き上げレバーがないことでモータードライブ内蔵になってしまったことが容易に想像できたからだ。それが今では山ではメインカメラだ。なぜそうなったのか、自己分析してみたい。

4-1.NikonF4発表の頃

これを書こうとして、いつF4が発表されたか調べたのだが、その時の雑誌を破棄してしまって定かではない。いや、大体は分かっている。発売日は1988年11月3日を当初予定したが、予約が殺到し必要数が確保できないので遅らせて12月上旬になったこと、それでも実際に店で触れたのは1989年2月以降だったこと(このころ6×7中判カメラを買ったときカメラ屋の親父からF4が入らないと言う話を聞いた)は分かっている。

しかし、発表時期にこだわる理由は、この1988年にソウルオリンピックがあったからだ。記憶ではオリンピックにF4が持ち込まれ、プロカメラマンに貸し出されて評価を受けたはずだ。ともかく、AF一眼レフとしての最上位機種としてF4は誕生し、発売前から評判を呼ぶほどであった。一方、キヤノンはEOSの最上位機種EOS-1を1989年に発売する。だからソウルオリンピックに間に合わなかったはずなのだが、記憶ではソウルで貸し出されたF4とEOS-1ではAFで100m競争(当時ベンジョンソンとカールルイスの全盛期)を撮るとEOSが上回った、と聞いた。これはソウルではなく次のバルセロナだったか、世界陸上だったかもしれない。

ともかくF4は大々的に発表され、僕自身新宿のデパート?での発表会に行った。これはアマチュアも対象にしたもので、試作品を含むF4の展示があり、沢口靖子がゲストで来ていた。(これが目的だったという噂も・・)

4-2.EOS-1と激突

F4は、想像以上の歓迎をもって市場に受け入れられた、と思う。NikonFから30年経ち、その買い換え需要もF4が受け止めたのではないだろうか。

僕の大先輩も定年間際にFの代わりにとF4を手にしていた。これ幸いとしばらく借りて使ったりしていた。Fの使い手にとっては、やはりF4は重すぎ、複雑すぎたようだ。しかしマニュアル露出に切り替えて使うことを勧めることでFと同じ使い方が出来る、と喜ばれた。

しかし、せっかくのバーレベル露出計もAFも無用の長物と化し、(そりゃそうだ。Fにはそんなものは何もない)それでも勘と目見で完璧な写真を撮る神業にはどんな最新機能も無意味とすら思われた。

そんな大先輩に認められたF4独自の機能、それは明るいファインダーと眼鏡対応のハイアイポイント、視度調整機構だった。

このことは僕にとっても感銘に値する。30年、こつこつと改良されてきたファインダーが、自動自動と派手に組み込まれた最新機能よりもよほど写真機の本質に値するのだ。

それはそうと、翌年キヤノンからEOS-1が発売されるや、カメラ雑誌誌上で派手に比較記事がでてくる。それはAFの速度、精度、マルチパターンAEの的中率、巻き上げ速度などであった。そこにはファインダーやシャッター感触などはほとんど対象にならなかった。その傾向はますますエスカレートして、今でも変わっていない。が、実際に写真を撮る人にはどれほどの意味があっただろう。

例えば、こちらに向かって直進するバイクをAFで連写して追従性を見る。たかが3.3コマ/秒(これが8コマ/秒であっても)で連写したところでパラパラ写真にすぎない。普通、動く被写体を狙う場合は、構図を考えてその位置に来たときに決め撃ちする。最も確実なのはMFに切り替え置きピン(被写体がその位置に来たときに撮ることを想定し、その距離に等しい位置=地面や線路=にピントを固定しておく)することだ。後で触れるが「予測駆動フォーカス」が遅いコマ速連写でしか機能しないF4の仕様は、いかに設計者が写真を知らないかということだ。

話がそれてきたので戻すと、露出にしても同じことで、雑誌の比較記事は太陽がバックにあるような完全逆光のポートレートを補助光なしで撮って、モデルの顔が適正かどうかなんて言っているのだ。キヤノンのは実に良く補正していた。僕はこんな露出オーバーのカメラで風景写真を撮りたくない。
ともかく的はずれな記事が多かったが、一般にはこんな比較が喜ばれただろう。(純粋に僕も楽しませてもらった。記事の内容はともかく)

さて、1989年から1990年は報道にとって激動の時期で、昭和から平成へ、天安門事件普賢岳噴火、ベルリンの壁崩壊、湾岸戦争などなど・・・。

普賢岳火砕流に巻きこまれた記者の手に残ったF4の最後の一こまが新聞に載ったりして、F伝説を彷彿とさせるエピソードもあったが、業界でもっとも有名だったのは湾岸戦争でカメラが動いたかどうかだろう。

湾岸戦争イラクの侵攻を多国籍軍が阻止したわけだが、戦闘場面が映画のようにテレビニュースや新聞に毎日でてきた異様な戦争でもあった。それを実現したのも前線まで同行した記者の功績なのだが、砂漠の中に前線基地があって砂嵐がひどく、過酷な環境であった。当然カメラもこの環境に置かれて正常動作を要求され、さながら品質保証試験の前線テストであった。NikonF4対CanonEOS-1の対決の場になってしまった。

この砂嵐はダイアル、ボタン、ファインダー着脱を持つF4に不利に働いた。特にファインダーに砂が入ると、目に見えるので目立った。一方で最新の兵器は強力な電磁波を出し、カメラのCPUが暴走した。これはEOS-1がひどかったようだ。しかしF4でも同様だった。結果、電子ダイアル、ファインダー固定が有利だというキヤノンの宣伝が効果を示し、欧州の報道関係はかなりキヤノンに変わってしまった。

一方、スポーツの分野でも変化が起こった。ボディ駆動で超望遠レンズのAF化が遅れた(当時300/2.8どまり)ニコンに対し、超音波モータで一気にラインナップを揃えたキヤノンが、野球場の外野席で目立つようになり、同時にAFの速さ、静粛さ(ニコンのために言っておくが決してニコンが遅かったわけではない。キヤノンの超音波モータが駆動時に音がしない(超音波は聞こえない!)のでより速く感じるのだ)からEOSの”白レンズ”が増えたのである。 

4-3.購入動機

ニコンは報道、キヤノンはコマーシャル御用達のイメージが出来ていたのが、崩れだしたのである。これはかつてニコンF2立ち上がり時期にF2が光漏れを起こし、朝日新聞社の報道カメラがキヤノンF-1にかなり奪われたことがあって以来のことで、しかも今回は製造上の問題ではなく製品性能上の問題であったから、状況が違う。結果F4はEOS-1に破れたように言われた。しかもこの時期はバブル景気全盛であったから高価なカメラや超望遠レンズがよく売れた、らしい。そんな中、F4は落ちていったのである。ニコンのカメラ事業にとって大打撃だったのは想像に難くない。

しかし、ちょっとまってほしい。いくら報道だからって砂漠にばかり行くわけではないし、極端にAFが遅かったわけではない。それ以上に、先のファインダーの例で見られるように、実際の撮影状況でカメラの性能は何をもって語られるのか。何回か借用したF4を使ってみて、シャッター音、シャッターショック、ミラーショック、巻き上げ音、手動巻き戻し可能、なによりF、FE2、FAといったカメラの操作性が維持されている点など、非常に扱いやすい印象であった。そして仕上がりは最新技術のマルチパターン測光、TTL-BLスピードライト調光によって安定したネガ濃度になり、カラーの発色がよくなる。普通に使える最上位機であった。ま、これで安くて軽かったら・・とも思ったが。

結局F5が発売されて、F4ディスコン(F3は継続というのに)のアナウンスがあって、購入に踏み切ったのである。このときにはF5がEOS-1ばりの電子ダイアル操作に変わってしまったのを見届けていたので、最後のダイアル一眼レフとしての価値も加わっていた。

往々にして無くなると聞くと皆欲しくなるようだ。店では出し惜しみか、品薄になり、中古価格も跳ね上がった。実は購入に踏み切った、というのは、知人が品薄のF4を手に入れようと二カ所で予約していたら、同時に入荷して、その一台を買わないかと勧められたからである。もし品薄にならなかったら買わなかったかも。

5.使用雑感

購入前からいろいろなところから借りて使ったが、主には結婚披露宴の撮影だった。FE2のところで触れたが、突然シャッター幕が故障してどうも不安になってしまったのと、暗いところでのピントが、開放Fで撮るときに合わなくて困ったからで、F4を使った結果はかなり信頼できるものであった。特にストロボ使用時の露出がすばらしく、TTL調光であるはずのFE2とは一線を画す写りだった。そんなところから信頼感があがったのだが、実際に購入してからの使用実績は、購入前より(!?)少ない。

5-1.操作性

ともかくシャッターダイアルをはじめ、露出モードダイアルレバー、露出補正ダイアル、フィルム送りダイアル、測光切り替えダイアル、感度設定ダイアル、視度補正ダイアルといったダイアルだらけのカメラである。これにレンズの絞りダイアル(絞り環)もあるから、えらく操作も煩雑に聞こえるかもしれないが、さにあらず。

そもそもカメラの操作は回転式ものが多く、ピントリングや巻き戻しクランクなどもそうであり、直感的に操作が統一されている。特にシャッターダイアル、絞りダイアルはピントリングと並んで撮影操作の基本だから、機種が変わっても同じであって欲しい機能だ。

一方、露出補正ダイアルを始め各種のダイアルは、カメラの機能が増加した結果、増設されたダイアルで、各社まちまちの操作性だったりする。言ってみれば完成形というものがなかったのだが、ニコンF4はダイアル操作の一つの完成形と言っても良いのでは無かろうか。

例えば露出補正ダイアル、これはシャッターダイアルの横、シャッターボタンとの間にあるが、僕にとってはオリンパスOM-2で慣れた位置だ。露出モードダイアルレバーは露出補正ダイアルと同軸に、測光切り替えダイアルはファインダー右横にあり、すべて右手の操作範囲であるから、どこに何があるかさえ覚えてしまえば操作しやすい。それに各ダイアルが単一の機能であるため、混乱しない。例えばFE2のようにシャッターダイアル内に自動露出モードが入っているものや、一つの電子ダイアルをボタンを押して機能を切り替えながらやるものは現在のポジションが把握しにくい欠点がある。

そういう意味では、液晶を使った電子ダイアルはどちらにどれだけ回すと求める機能が出てくるか分からないが、F4のダイアルなら一目で分かる。行き先が分からずにとりあえず動くより、目的地が見えていて動く方が、気分的にも楽なのと同じだ。

これを言うとすぐ、「EOS-1のような中間シャッター速度が使えない」から電子ダイアルが優れているという反論を聞く。中間シャッターとは、例えば1/125秒と1/250秒の間に1/3段間隔で1/160秒、1/200秒が入っていることである。こうするとシャッターダイアルの直径が3倍になってしまう・・・・。

いや、全く夢のない、というか何としてもシャッターダイアルを残してかつ中間シャッターも入れるのだ、という意気があれば同じ直径でやれないことはないのだ。実際ニコンF2の高速側シャッターは無段階!で使えた。

そもそも普通1/160秒とか出てくる必要があるだろうか。僕は1/125の-1/3EVという方が理解しやすい。今までのシャッターダイアルの速度表示の文字は同じでクリックだけを1/3段にすればすむ。

電子ダイアルでもっとひどいのは絞りだ。大体f4の次がf5.6なだけでも普通の人は分かりづらい(絞りは2の1/2乗倍=1.4倍数系列)のにf4.5やf6.3とか出てきても何のことやら;(。レンズの絞りダイアルは昔から1段毎のクリックしかなく、しかもその中間は無段階に使える。f4から-1/3EVしたかったら目分量で(クリックの手感で)f5.6方向へ少し回すだけで十分だ。その時の絞り値がいくつなのかなんて必要ない。

すなわち電子ダイアルは液晶表示でしか表現できない関係上、厳密な数値でしか表現できないのが直感的操作の支障になるのである。

それ以外にも、スイッチを入れなければカメラの状況が全く分からない(F601ではフィルム枚数も分からない)というデメリットもある。最新のF80あたりで随分改善されたが、それでも及ばない。それほどF4の操作性は優れたものだったのである。

こういう状況はいろいろな電気製品、精密機械製品で見られる。コンピュータが入ったお陰で機能はどんどん増えてその切り替えを行うためにスイッチが増える。客はそれに拒絶反応を起こし、見た目のスイッチを減らすが、一度増えた機能は削れずに、シフトキーなど複数の機能をワンキーにあてがう。結果、益々分かりにくくなる。ふと気づく。今まで機能を増やしてきたが実際使っているのはこの機能だけだったと。

5-2.撮影状況

先述のように、ともかく露出の信頼性は高い。特にスピードライト撮影(あ、ニコンではストロボをこう呼ぶ。ストロボは商標)でのTTL-バランス調光は他社の数歩先を行っていた。披露宴を始め、人物撮影のスナップには信頼できるものだ。残念ながらクリップオン(カメラのホットシューに直接つける)しかやったことがないが、調光コードを使ってもよさそうである。

一方、通常の風景撮影などでもマルチパターン測光は威力を発揮する。尾瀬に持っていったときもあえてマルチパターン測光を常用したが、本機にはスポット測光も付いているし、入射式露出計も持っていったので、露出が不安なポイントではそれぞれ比較して撮ってみた。結果はマルチパターン測光で十分だった。面白いことに、ここはスポットで計って加重平均しようと思い、比較してみると同じ露出値が出てきたのである。結構主題を見抜いて測光しているのかも(もちろんそんなことはないのだが)。

だが、欠点もある。特に半逆光で樹木の緑があると不思議と露出オーバーになる。このカメラは雑誌によると他社のカメラよりも逆光補正はしないと聞いていたのだが。風景写真では特に逆光の露出オーバーは使い物にならないことが多い。

雑誌記事のように完全逆光で人物に露出があって喜ぶユーザーは素人でもいないと思う。バックがほとんど飛んでしまうからである。普通はレフ板、せめてストロボで補助光を当てるところだ。でなければそういう状況で人物は撮らない。

一方で風景では逆光が多い。その時に露出オーバーが一番困るわけだ。全く雑誌記事はあてにならず、当時のキヤノンの評価測光が露出オーバーなので華を持たせるためにわざとそうしたのではないかと疑ってしまう。そういえば最近のEOSは露出アンダーぎみで、こういう無茶な逆光撮影の雑誌記事が減ってきたのはその関連ではないか。

マルチパターン測光は便利でもやはりスポット測光の結果と比較したいことは多い。そのときは測光ダイアルを回すわけだが、ここだけは押しボタンでその間だけスポットに切り替わるように出来ないだろうか。スポット測光のまま自動露出で写す人などほとんどいないのだから(真ん中でしか測光しないので)、スポット測光ボタンがあるといいのに。ちなみに初代マルチパターン測光、ニコンFAはボタンを押している間だけ中央部重点測光に切り替わる機能があった。

 

評判の芳しくないAF性能だが、実際には速度、精度とも優れている。特に精度は優れていて目で見て合わせるのと同等、それ以上の性能である。暗いところも強い。雑誌では動くものばかりテストされて、しかも何コマ撮れたかというものばかり。静物でのピント精度を比べたらF4の評価はぐんと良くなるのではないか。

しかし、中央部でしかピントが合わないので普通はフォーカスロックして使う。これは不満点だ。

そしてそして、実際の撮影状況では中央でしか合わないAFではどうせ使えないのだが、仕様面で最も腹の立つことがある。それは「予測駆動フォーカス」だ。

これは動体予測と言われることが多いが、ミノルタα7700iに初めて搭載され、ニコンもほぼ同時期に同様の仕様で出したものだ。AFは構造上ミラーが下がっているときに駆動して、ミラーが上がってから実際に露出する約0.05秒の間は止まってしまう。このわずかな時間差を考慮して、それまでの駆動状況を記憶、相手のその状態で移動することを予測して先回りしてピントを合わせる機能が「予測駆動フォーカス」だ。これは僕自身、アイディアを持っていてそれが実現されたものであったから是非とも使ってみたかった。

ところが、である。せっかくのこの機能は、巻き上げが低速連続送り、コンティニュアスAF時にしか働かない。何を言っているのか分かりにくいと思う。わざわざゆっくり巻き上げの連写で使わなければならないということだ。

例えば鉄道写真で(知らない人は不思議に思うだろうが)構図の中でシャッターチャンスはほとんど一点なのである。鉄柱と先頭車両の位置関係、架線の影、編成の配置などから決まり、これを決めることがなかなか出来ずに苦労するのだ。

それを、何が悲しくてたかが3.3コマ/秒の連写で写さなくてはいけないのか。一コマ撮影で一発で決めるしかないのである。なのにそれでは「予測駆動フォーカス」が働かないのだ。

何のためにそんな制約を加えたのか。全く、開発者が写真を知らないとしか言いようがない。

ここだけの話、開発者に直接食い下がったことがある。相手は何を言っているのか分からなかったみたいだが。ちなみにF-601以降のニコンは全ての巻き上げ、AFモードで「予測駆動フォーカス」が機能する。すばらしい。

 

そして、褒めちぎったダイアル操作だが、なんでロック方式がまちまちなのか。まるでダイアルのロック方法を競作してすべて載せたみたいだ。露出補正ダイアルなんかせっかく誤操作しにくい位置に着いているのに、ご丁寧なロックが付いているから使いづらい。それでもFE2やF3なんかより遙かにましだが。シャッターダイアルはX接点速度=1/250にしかロックはない。これに習って露出補正も±0にだけロックで、後はクリックにしたらぐんと良いのに。またはオリンパスOM-2のようにロックなしクリックのみで十分かもしれない。そして電源オンオフを兼ねた巻き上げ切り替えダイアルも小さなロックボタンを押しながらでないと回らない。とっさには使えない。

良く雑誌で叩かれていたボディ前面にあるAE、AFロックボタンは、僕にとっては使いやすい。レンズを支える左手も使えるのでホールディングがしっかりできたまま押せるのだ。むしろF-601などで使われる、後面のスライドボタンの方が撮影時にシャッターを切る右手の親指で押し続けるのでホールドしにくくなって嫌いだ。

6.所感

正直に言って、今でもF4は重い。F3の大きさでF4の機能が入って、信頼性もあれば(=Fヒトケタであれば)最新機種としても十分魅力的だと思う。

なのにそういう方向には行かなかった。それはキヤノンEOS-1、EOS-1Nとの対決の結果がF4に不利に働いて、ニコンにはダイアルを辞め、電子ダイアルにする免罪符になってしまったからだ。たぶんそこは内部で議論されたことだろう。

しかし、EOS-1が報道に認められたことは、F4を買った多くのニコンファンには無関係なことである。先述のようにユーザーがF4の何が良くて使っているのか考えるとその多くはカタログスペック以外のところにあったのではないか。

今まで書いた以外にも、シャッターバランサー、動作共鳴音、ファインダー情報表示、ケーブルレリーズソケットなど誉めるところがいっぱいある。しかしそのほとんどがF5に継承されず、F4のAF同様、葬り去られたことは返す返す残念でならない。キヤノンに勝つことはニコンにとって大事なことだが、そのために自分の良さまで捨ててキヤノンと同じ土俵に上がってしまったことは、今までのユーザーを馬鹿にしたような気さえする。

そしてF4にとっては、Fひと桁で唯一、上下カバーがプラスチックと言うことも、その名を下げる要因となっている。ごく最近までのニコンカメラはプラスチック部分は黒半艶で塗装され、半艶は素材のしぼ(細かい凹凸)か塗装かは分からないが、ちょっとした傷でてかった跡が付き、最後は全体がてかてかになってしまうのだ。皮肉なことに大事に磨く人ほど早くそうなる。他社も同じだがキヤノンなどははじめから諦めているのか、もともと光沢に近い。ニコンは、はじめが重厚な半艶だから使い込んで安っぽくなったようでがっかりする。中古の値段にも影響しそうだ。

このように不遇?なカメラであったが、僕は今でもF4の新型ファインダーがでてそこにRGBマルチパターン測光がはいれば欲しいと思っている。

2000.3.20