技能喪失
「食玩」というものをご存知だろうか。最近の造語だと思うが、食べられる玩具にあらず、お菓子付き玩具のことである。昔で言えばグリコのおまけのことだ。しかしこのおまけ、最近はバカにできない。お菓子の方がおまけのようだ。おまけで育った世代(筆者の世代か?)が造形作家になって、超精密な玩具が付くようになっているのだ。題材はいろいろあって「がちゃぽん」と呼ばれるカプセル入りの玩具も多種あるが、やはりキャラクターものが主流だ。こんなのである。
ウルトラマンティガ
ウルトラマン
テレスドン出現
「タイムスリップグリコ」というのが隠れた人気で、普通のスーパーにも売っているのだが、「なつかしの20世紀」という題がついているように、大人向け(お菓子は子供にあげる;)商品だ。ニコンFとか箱スカとかが出ていたのだが最近のはウルトラ怪獣のジオラマもある。今日出てきたのは地底怪獣現るというものでビルを崩してアスファルト道路から現れたテレスドンが電柱や交通標識を倒して、戦車に襲いかかる情景が、なんとたかだか50ミリ四方のシリコンゴム造形で表現されている。歯の一本まで着色され曲がった標識は汚れまで再現されているのに注目。
先に触れたように造形作家はカリスマ的な人がいて人気があり、昔はマニアの間だけの通信販売だったが、これだけ大量生産するとなると、原形は日本製でも、製品はご多分に漏れず「中国製」である。玩具、模型の世界では、中国製に安物の意味はない。精密成形から精密着色まで、おそらく手作業であろう作業が精巧に行われている。
話はそれるが、スタジオジブリ(「千と千尋」や「トトロ」の)のアニメーションは世界にも認められているが、最近のセル画は中国へ発注するそうだ。セル画も原画、線画は日本で書かれるが、着色は中国の手作業だ。逆にデジタル化してパソコンで着色しているものもあるが、もともとアニメーターは着色から修業していたのだがその作業が日本に無くなってきている。だから将来の日本のアニメが心配だと。先の造形作家も同じだ。無名のうちは大手で下請けするのだが、それが中国へ出ているので修業できない。
物作りは、いきなり原画、原形のような創造が出来るわけではない。製品設計も部品設計から始まる修業が必要だ。そういう下地があって初めて物作りが出来ることを忘れないで欲しい。
2003.4.12