naka-maの心言・2

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カメラの行方-レンズ編AF-S VR Zoom Nikkor ED 24〜120mm F3.5〜5.6G(IF)-その2

カメラの行方-レンズ編-2

カメラレンズの性能というと、つい解像力だけに目が行きがちだが、実際の撮影で特に晴天の屋外の場合、絞りが二絞り程度絞られていれば、多くのレンズは実用上十分な画質になる。それ以外に、コントラスト「抜け」の良さ、色のにごりの無さ、逆光のフレア、ゴースト、ボケ味などが写真の印象に大きく関わる。これを一口に「レンズの味」と言う抽象的な表現を使うこともある。しかしこれらは、数値的、視覚的に表すには実験設備が必要で、しかもその結果が直感的に分かりにくい。おまけにデジタルカメラでは、フィルムよりも後から補正が可能なので、一般にはレンズの性能なのか、カメラの性能なのか区別しにくい。従って、多くのシーンを撮影して、そのレンズの癖をつかむしかない。

新レンズ24-120は、抜けの良い描写である印象を持っている。ボケ味などはこれから見ていくことになる。

光学的な性能である収差は、球面収差、非点収差、コマ収差、像面湾曲、歪曲収差(ザイデルの五収差)さらに色収差が計算で求められるので、予め設計段階で検討されている。そのほとんどが解像力に影響を与えるものであるが、唯一、歪曲収差=ディストーションはその名の通りゆがみ性能である。

歪曲収差は水平線を撮影したのに曲がって写るものだ。垂直線でも起こるのだが、良く勘違いされるのは、広角レンズで左右にはずれた人物などの被写体が歪んで写るのをレンズのせいにする人がいるが、これは歪曲収差ではなく「広角歪み」という遠近感を誇張する性質によるもので、これはそれを知らずに撮影する撮影者のせいだ。

さて、前置きが長くなったが、歪曲収差を見てみよう。

 
24-120dst


歪曲収差の比較

 

一般にズームレンズの歪曲は大きく、広角はたる型、望遠は糸巻き型に曲がる。比較用に単焦点レンズを用意した。24mmでは明らかにたる型である。しかし20mm単焦点レンズでも同程度の歪曲が見られる。なお、被写体までの距離は30m程で、一般の風景を想定している。(至近距離では変化する)

120mmでは糸巻き型だが気にならない程度。50mmでほぼゼロである。マイクロ60mmは完璧な歪曲ゼロである。このレンズはあらゆる面でデジタルカメラにとって優秀なレンズである。

歪曲収差のまとめとして、24-120mmの高倍率ズームのわりに、高度な収差補正がなされていて、文句のない画質である。(なおフィルムの場合、画面サイズが大きいのでもっと大きく収差が出ると思われる)

 

次に口径食(ビグネッティング)による周辺光量を見てみよう。

小型化されたレンズでは、周辺に全光量が届かず、薄暗く写ることが多い。これはレンズ口径の不足により斜め方向の光が「けられる」からである。

 
24-120vig


周辺光量比較

 

太陽から離れた青空を撮影したものだが、最も差の出る広角側で、絞り開放と一段絞ったものの比較だ。よく見ると絞ったものの方が均質になっているのがわかる。しかし、むしろ実際の空の濃淡と、露出差(オートなので何故差が出たのか)の方が気になるくらいで、問題ない。

 

最後に、このレンズの売りである、VR=バイブレーション・リダクション性能である。

レンズ内部に角加速度センサを内蔵し、手ぶれを検知し、光学系のごく一部を、ぶれを打ち消すように動かして補正する。反応速度と精度が問題になる。また画質の低下も心配だ。

24-12024VR
24-120120VR


VR性能比較

共にピクセル等倍で切り出した画像だから小さければ気が付かない(ピンぼけに見える)ぶれだ。シャッター速度は24mmで1/6秒、120mmで1/15秒だ。しかし実はオンオフ各二枚撮ったがぶれたのは一枚だけであった。だから手ぶれ補正の結果でぶれなかったとも判断しにくいが、ヒット率が上昇した結果だと思う。いずれにしても画質低下の悪影響は見られない。常時VRオンで良さそうだ。

手ぶれ補正の効果がもっと分かる写真も出しておく。

24-120120VR1
24-120120VR2



120mmの至近距離なので補正するにはもっとも条件の悪い状況だが、はるかにカタログ値3EVを越えたシャッター速度にも関わらず、ここまでぶれが抑えられている。


VR Nikkor 24-120/3.5-5.6G の使用結果は上々だった。常時VRで、絞り8の絞り優先オートであれば失敗の最も少ない撮影が出来る。ゴーストなどはまだ未知数だが、抜けの良い色乗りの良い印象だ。しかし、絞って使うので被写体ぶれに注意しないといけない。ということで登山での風景写真にうってつけのレンズだが、室内人物や鉄道写真では低速シャッターになりすぎないよう感度アップするなどして対処すれば万能で使えるレンズだ。

以上、レポートを終わります。皆さん買ってあげてください。