横浜の星雲2019年2月2日
箱根や富士山は前日の雪で自分の車では入れないので、いえ、ほんとは寒いので[E:#x1F635]、横浜の自宅から、星雲の写真に挑戦してみました。
今まで何度かそういう試みをしていますが、今回は以前から興味のある「ラッキーイメージング」法を試してみました。
惑星写真を撮るのに向いているCMOSカメラを使って、短時間露出で多數枚撮ってコンポジットする方法で、手持ちの機材で試すことができるので筆者も興味がありました。
まずは横浜の光害の中でどこまで撮れるか、やってみた結果です。
撮影日:2月1日、2日
撮影地:横浜市
撮影機材:タカハシ16cmニュートン反射(MT160)直焦点、焦点距離1000mm、Skywatcher AZ-EQ6GT赤道儀、CMOSカメラASI224MC
撮影データ:ゲイン300、1〜10秒露出、FIT、DSSコンポジット、画像調整(ステライメージ、PhotoshopCC)、トリミング有り
・M82
8秒x100枚
FIT形式の画像をDSSでディベイヤー処理してカラー化してスタックします。
M82は不規則銀河として知られ、分裂がよくわかります。
ただ、Hα波長のガスが全く写らないのは意外でした。
ASI224MCは近赤外光の感度も高いので有名です。光害のバックグラウンドから分離しきれなかったと考えるべきでしょう。
よく写るようで難しい「ラッキーイメージング」です。
当初、DSSのFIT形式の扱いを知らずにモノクロでやってしまいました。以外にこれも良いかと。
「ラッキーイメージング」とは多くの中からシーイングの影響が少ない画像を選んでコンポジットする方法ですが、今回は全て使っています。思いのほかシーイングの良い日でした。
・M1
かに星雲という名称で有名な惑星状星雲M1です。メシエ番号の1番目ですが街中ではよく見えません。
最初に撮影したのがこれです。枚数が少ない(総露光時間が少ない)ためカラーで写すとノイズがひどかったので、偶然最初に行った白黒の方が綺麗です。
フィラメント構造と言われるうじゃうじゃがよくわかります。
8秒x50枚
翌日枚数を増やしました。構図が偏ってしまいました。かなりトリミングしていますので、写真の比率はいろいろです。
フィラメント構造にピンク色が見えます。過去にデジタル一眼レフでとったこともありますが、小さい撮像素子のため大きく写り迫力が違います。天文少年の頃、プラネタリウムのパンフレット表紙にあったのがこの星雲でした。そのくらいの迫力で撮れるのは感激です。
10秒x160枚
なお、この写真に写っている赤、緑のうねった線は、撮像素子に乗っている固定ノイズです。本来一つの点が光って映るのですが、多数枚合成する際、星基準で重ねるため赤道儀の極軸設置誤差と追尾誤差が星ではなくこのノイズに現れたのです。「ラッキーイメージング」だとこの程度の誤差を持つ赤道儀でも問題ないところもメリットです。(オートガイダーによる補正をすればこの赤道儀でも1秒程度の精度になります)
・M46+NGC 2438
とも座の散開星団であるM46の中には惑星状星雲のNGC 2438があり、リング星雲として知られていますが、この写真の拡大率ではこと座のM57のように外側に赤い輪郭が見えます。これが映るとは嬉しいです。
7秒x300枚
・M42
いつものオリオン星雲です。
10秒でトラベジウム付近が白く飛んでしまいます。露光時間を色々変えてphotoshopで合成しました。
1秒x20枚、2秒x20枚、5秒x20枚、10秒x20枚
今回撮影に使ったカメラはいつも惑星写真を撮るときに使っているCMOSカメラです。
ZWO社 ASI224MC
このCMOSはソニー製の裏面照射型です。
惑星の場合、高感度なので1/100秒程度で100fpsの高速動画撮影を行うのですが、今回の場合、高感度を生かして、それでも数秒露光です。ただCMOSはダークノイズが大きく10秒以上の露光ではノイズだらけになりますので、そうなる前に短時間で露光します。
本来それ以上の長時間露光する場合、冷却CCDカメラを使いますがCCDそのものの新製品がなくなってしまったので冷却CMOSカメラも多くなってきました。
街中では、光害が酷いのでどうせ10秒以上露光してもかぶりが酷くなるだけなので、光害に埋もれるギリギリくらいの明るい天体を狙います。16bitの階調を生かしてあぶり出すわけです。
それならデジタルカメラでもいけるかもしれませんが、この「ギリギリの明るさの天体」が大きさの小さな惑星状星雲や系外銀河なので、無駄に広い画角になるので、以前筆者がやったように長焦点望遠鏡を使うことになり、矛盾します。
市販のデジカメで自由にクロップできるものが出てくれば使えると思うのですが。
これは今回の新兵器、ASIAIR。
これは「ラズベリーパイ」というミニパソコンが入った製品で、カメラと赤道儀をUSBで制御し、WiFiでタブレットやスマホとつなぎ、そこに入れた制御アプリで遠隔操作できるようになる優れものです。
ZWO社 ASIAIR
こうすると部屋の中から外にある天体望遠鏡を制御できます。
部屋から見た望遠鏡。
iPadのアプリ画面。
撮影中の画像が見られます。ここから連続撮影の指示も出すことができます。
さらにオートガイダーも繋がって、ガイド精度も確認できます。
これで寒い冬でも部屋の中から天体撮影ができます。
と言っても始めに設置してアライメントして、それでも天体を変えると位置が狂うので外へ出て合わせ直す作業が必要で、完全自動制御ではありません。
しかし、10秒露光で360枚撮るには1時間必要ですから、その間、モニタを見ながらガイド精度の監視なんて作業が車の中からできると期待しています。
夢の完全自動化が一歩進んだ感じです。