naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

HDR=ハイダイナミックレンジを使う理由2

HDRやハイダイナミックレンジで検索すると、夜景の写真がよく出てくる。「三丁目の夕日」の映画ヒットによる「昭和の街」ばやりで(筆者は漫画の方が好きだな)、その雰囲気の夜景写真が多く見られるようだ。

筆者も昔から地元周辺の夜景を撮ったりしていたが、天体写真に通じて、なかなか階調の再生が難しい。街灯や窓明かりに対し、影の部分のトーンが暗いのである。
筆者の通勤先が大井町周辺であるため、以前から気になっていた「昭和の街」を撮影しようと思い立った。やはりこういう街は夜が似合う。
そこで先日書いたような大井町の写真を撮ったのだが、作為的でひとまねみたいなかんじになってしまった。
しかし、HDRの練習台にもちょうど良いので、段階露光をしつつ、いつものJPEGではなく、RAWで撮影してみた。

実際の画像をみてください。
元の画像はこの三枚である。

NikonD300
AFNikkor20mm/2.8
ISO200 F7

露出1秒
0801161756

露出1/2秒
0801161756_1


露出3秒
0801161756_2

単独で写真にするのがより望ましいのだが、やはり露出が難しく、白とび、黒潰れは避けられない。
この写真は新旧の対比が主題なので、おもいっきり明をとばした3秒露出が正解か。

しかしHDRとしてはこれで素材が揃ったので、画像処理するのだが、PhotoshopCS3にHDR自動作成機能が入ったのでこれを使うと楽にできる。
以前は、ひとつひとつの画像から適正露出の部分を選択し、レイヤーで効果を見ながら合成したものだが、位置合わせからトーンの合わせから自動でやってくれる。
だが、正直言ってこのままではいろいろ不具合があるようだ。特に光量飽和部分では色が誇張されたり色飽和を起こしたりして、思わぬノイズが出てくる。
そこで、以前からやっていた、レイヤーを重ねるテクニックも併用しながら、トーン合わせを根気よく行う。

PhotoshopCS3によるHDR合成など
0801161756_012

さて、
RAWデータの良さは、JPEGの各色8bitに対して16bitあること。これは撮像素子の階調は12bit程度なのだがそれを生かしきれる広さを持っているということであり、ここから標準状態では見えない階調をトーンカーブをいじって呼び出すことができる。
これにより、一枚の写真からHDR的な写真も作れる。

1秒の画像をトーン調整
0801161756p_2

筆者のカメラはNikonなので純正ソフトで「デジタル現像」すると汎用ソフトよりもカメラに合わせた処理ができる。
特にNikonでは「Dライティング」という階調拡張機能が使えるので、便利だ。

同じく1秒の画像をNikonキャプチャーNXでRAW画像現像
0801161756nx

色の違いは筆者が思いつきでやっているためであるが、このように、HDR手法は合成に頼らなくてもできる。
しかし、写真のショールームの中を見てほしい。(今回の写真はクリックして別ウインドウが開きさらに虫眼鏡マークになったマウスをクリックすると100%画像が表われる)
白飛びぎりぎりの部分ではいかにRAWでも階調が失われているのがわかるだろう。ここがHDR合成の存在意義だ。

また、Photoshopで作業したものは、RAW展開もアドビカメラRAWで行ったが、ショールームの窓枠辺りを見ると、輪郭が赤かったり青かったりしている。これはレンズの「倍率色収差」がでていて色ズレになっているのだが、NikonキャプチャーNXではこれが解消されている。これはソフトが自動補正をしてくれる為で、D3,D300のデータなら自動で、他のカメラでも修正コマンドで行える。
しかし、使い慣れたレンズのあらもここまで見せてくれるとちょっとショックだ。
これを考えると、RAWデータは純正ソフトを使った方がよさそう。
ちなみにJPEGならカメラ内部で修正をしてくれるので面倒は無い。HDR合成前提ならJPEGで十分だろう。

ついでに空をみてもらうと、ノイズの出方が違うのに気付くだろう。これは三枚重ねて滑らかになることもあるのだが、露出どアンダーの空を強引に引き上げた為でもあり、やはり撮像素子のダイナミックレンジを使い切るには無理もあるということだ。

これらの点で、画像合成によるHDR手法を使う意義があることをわかっていただけただろうか。

追記(蛇足とも言う)

筆者の写真への考え方は、見た目の再現であり、撮影者の見た光景を鑑賞者に見てもらって、そのときの感情や感動を共有してもらいたいというものだ。
一方、写真を表現ツールとして用いる場合、見た目通りではなく、表現者の主張をあらわすように強調されたものであり、「普通ではない」ものである。HDRはCGのように写真を見せることもできるのでそういう使い方もある。
筆者はこの場合、絵画、グラフィックによるもののほうがより自由な本来の自己表現ができるという考えから、写真はこういうツールには力不足と思っている。
だから自分の写真は強引に人の心に割り込むのではなく、おだやかに自然に入ってゆけば良いと思う。