naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

一眼レフデジタルカメラ-1(2002)

一眼レフデジタルカメラ-1

夏のボーナス商戦に向けて、好調デジタルカメラは新製品ラッシュだ。各社から連日の新製品発表が続く中、注目のNikonD100、富士ファインピクスS2proが発売になった。これと先に発売されたキヤノンEOS-D60は、二十万円台と高価ながら、有効画素600万ではじめて一般ユーザーにも手が届く一眼レフデジカメである。なにせ、ほんの数年前までは600万画素といえば、100~200万円しており、これが一般化したら35ミリフィルム銀塩カメラは終わりだろう、とさえ言われていたのだ。デジカメの、とりあえずの完成形であるわけだ。

デジタルカメラは、200万画素クラスの小型、低価格機種が売れ筋で、これはコンパクトカメラの代わりを想定している。使い捨てカメラの代わりはおそらく35万画素クラスカメラ付き携帯電話になるだろう。いずれこれらは一本化されるだろう。

その上位として、300万画素以上のクラスがあって、これはパソコンとプリンタの接続で写真印刷を可能としている。200万画素がこの用途を切り開いたが、プリンタ性能の向上でA4サイズの印刷は300万画素が最低条件になる。もっとも大抵は「サービスサイズ」やはがき印刷であろうから、200万画素で十分だが、可能性として持っておきたい、というのも人情だ。

そして最上位機として500万画素クラスがある。これはより画質にうるさいマニア層を相手にしている、と思われる。事実、サンプルを見ると相当の高画質であり、A3印刷も可能だ。レンズも相当の性能が要求され、こだわりのあるものばかりだ。

こうしてみると、熾烈なメーカー競争の中で、一般ユーザー向けデジタルカメラは網羅されており、一眼レフデジカメの出番はないように見える。それでも600万画素一眼レフが注目される理由は何か、ここから考えてみよう。

1-1.コンパクトカメラと一眼レフカメラの違い

銀塩カメラでも同じだが、このふたつのカメラ形式には機能上の大きな違いがあり、発達の経緯が違う。以前にも書いたが35ミリカメラはライカで始まり、レンズの種類が増えてくると、レンズの画角が(フレームではなく)ファインダーで直接見える一眼レフが主流になる。レンズ交換の出来ない廉価版がファインダーカメラとして一般向けの奔流となり、それの小型化でコンパクトカメラが生まれた。プロ向けのライカや一眼レフが、一般向けコンパクトカメラと最も違うところは、20年前なら「レンズ交換が出来て望遠レンズが使えること」だったが、いまやズームレンズ全盛だ。大差なくなってきている。今なら「シャッタータイムラグが短い」と「ピント精度が高い」ことが最も大きな違いだと、筆者は考える。

今の一般向けデジカメは、コンパクトカメラの系譜で、(一部を除き)その技術の流用で発達してきた。従って500万画素クラスを手にするハイアマチュア層の一番の不満は「シャッタータイムラグ」と「ピント精度」といったカメラの基本機能である。「露出精度」はデジカメの特性上かなり高精度にしなくてはならないのでここでは触れないが、ホワイトバランスを含めた「総合画質」も問題になる。

一眼レフカメラのカメラ基本性能がデジカメにも期待されているわけだ。

1-2.受光素子の大きさの違い

一般向けデジカメは、歴史的に見て、ビデオカメラの発展に依るところが大きい。ビデオカメラからビデオ機能を取ったものに、デジタル画像機能を入れて、超小型化したもの、カシオのQV10は当時流行っていたシャープ「液晶ビューカム」のミニチュアのようなスタイルで、デジタルカメラを一気に一般化した。この大きさが以降のデジカメの指標になったのだが、そのために受光素子(CCD)の大きさもビデオカメラと同じになった。1/2(6x4ミリ程度)~1/4型のものが主流である。

受光素子が小さいとレンズも小さくなり、コストも下がる。またピントの合う範囲(被写界深度)が広いので記念写真のような一般的な写真には向いている。しかし一方で写真表現としての「ボケ味」を生かしたポートレートなどが撮れなかった。

また、小さなエリアに超高密度で画素を配置する技術が発展した結果、絞りによる可視光の干渉領域に突入し、光学絞りが使えなくなってきた。絞りが小さすぎて絞り羽根による制御が出来ず、2段階のピンホールになっているものも多い。そして物理的にもうこれ以上細かくしても光の干渉によってピンぼけになるところまできている。あわせて一つの画素が数ミクロンでは十分なS/N比がとれなくて、ノイジーな画像に成りだした。(これは技術的に改善可能だが)

今回出た一眼レフデジカメは従来の一眼レフカメラのレンズを流用するため、受光素子はAPS(35ミリフィルムより小さいフィルム規格)サイズであるので、上記の欠点が全て解消されるのだ。

1-3.レンズ性能の違い

一般向けデジカメは上記のようにレンズも小さい。設計上は楽になるのだが、画素が細密なため、非常に高い工作精度が要求される。一般に35ミリフィルムカメラのレンズ解像度が100本/mmで上等なのに、デジカメでは200本/mmでも並なのだ。

そしてレンズ固定式のカメラであるから、ユーザーはそのレンズに広角から標準、望遠、マイクロの全てを求めるのだが、それは無理というものだ。巧みな設計でこなしているが、基本的には広角重視、とか望遠重視とかになるものだ。用途別にカメラを揃えなくてはならない。

一眼レフデジカメは今までの交換レンズ群を使えるようになっている。ところが銀塩とは違った特性が要求されるので必ずしも何でも良いわけではない。また撮影画角が狭いので、焦点距離が35ミリフィルム時の1.5倍程度に換算されてしまう。だから28ミリの広角レンズが52ミリの標準レンズになってしまい、広角側が不足する。

以下次号;)

 

2002.7.6