naka-maの心言・2

http://naka-ma.tea-nifty.com/butubutu/ 「naka-maの心言」続編です

2002年、エアコン事情

2002年、エアコン事情

2002年、今年もよろしくお願いします。

ひょんなことから、年末年始とエアコンを見て回った。目的は、実家の安物エアコンの温度制御が、温度変動幅が大きく、例えばベッドの枕元で+2°C上昇後-4°C下降、再起動後+2°Cで持続、再上昇、というサイクルで変動を繰り返すのだが、これを病院並の極力安定した製品に交換したい、というものである。

実際、仕事では19年も前の入社時から恒温槽を使っており、正確な温湿度制御ができる。すきま風のある部屋では数値誤差はあって当然だが、変動幅は±1°Cくらいの制御は楽に出来ると思っていた。

近所に出来た「ヤマダ電気」で一通りのカタログを集め、店員さんに事情を説明して、各メーカーに±1°Cの温度制御が出来る機種を問い合わせてもらった。予算は「金に糸目は付けない」と、一度は言ってみたかった台詞を使ってみた。ところが結果はどのメーカーも±2°Cがせいぜいとのこと。意外な結果であったが、考えてみると断熱室ではない一般の家庭で「保証」できるはずはない。そこで方針を変えて、「寝ている枕元で」より安定した制御の出来るものを調べることにした。

幸い、株式会社やまXXの空調関係大御所(!)やま@@氏が知り合いなので聞いてみることにした。というのは彼に過去聞いたことには、ビルの空調の室内センサーが彼の職務なのだが、それが付いている場所が制御に重要なのだと言うことだった。空気の流れ、人の居場所などを考えれば当然なのだろう。ところが一般の家庭用エアコンでは、少なくとも家にあるものは、室外機と室内機に温度センサが付いている。天井付近の温度を計っているわけだ。僕は家では床にごろごろしているので、冬場のエアコンは寒く、石油ファンヒータを使っている。だから正確な温度制御のためにはセンサをどうするかが重要なのだろうと、センサに詳しい(はずの)彼に聞いてみた。

結果として予想通り、

・リモコンに温度センサがある機種
・床温度計(下に向いた赤外線温度計)のある機種
・その他、容量に余裕があること、床暖房の併用、部屋の断熱強化

を指南された。調べてみると、リモコン温度センサは「サンヨー」、床温度計は「三菱電機」「シャープの一部」だけであった。それだけだった。皆さんはこの結果にどう思われただろうか。僕は正直、愕然としている。

昨年まで、エアコンの最大の売りは「省エネ」だった。インバータ、PAMエアコンはTVCFでもよく見た。この辺りの技術はエアコンの基本性能の向上として各社が力を入れてきた結果、数年前まで結構差があったものが、ここにきてほぼ各社追いついた。

で今年(2001年秋から)、各社のカタログにあるのは「マイナスイオン」である。「マイナスイオン」という言葉、最近よく聞くが、科学的用語ではない。僕はフジテレビ日曜夜9時の「発掘 あるある大辞典」という番組をよく見ており、食品の栄養素についてわかりやすく解説するところは面白い番組なのだが、そこでこの「マイナスイオン」を取り上げたときはさすがに「うそー」だった。ところが化学屋だった我が父に「マイナスイオンとはなんだ」「お前あれ見て何にも思わなかったのか」と言われ、恥ずかしながら「くそー」とインターネットで検索して調べてみた。皆さんも簡単に見つかるのでやってみることをお勧めする。「マイナスイオン」についてはまともな解説はついぞ見つからなかったばかりか、否定論者の方が分がありそうである。「マイナスイオン」を「静電気を帯びた水蒸気」と定義すれば(当然イオンとは別物である)、滝壺の水の粉砕時に発生することや、同じく静電気を帯びた「ダスト」とくっついて落下させる能力があることなどの説明は出来る。(静電気は物質によって+電荷をもつものと-電荷を持つものがある。水はマイナス。)だが、それが血液をアルカリ化して「さらさら血(=「発掘 あるある大辞典」番組の造語)」になって健康によい、や「マイナスイオン」健康食品などとなるともう詐欺紛いである。

長くなったがこの非科学的造語を大手家電メーカが安易に使っていることに驚くと共に、それがエアコンの機能のトップに来るものではないことをメーカは認識しているのか、ということを問いたいのである。他には帯電と活性炭による空気清浄機能、フィルタの清掃が容易であることなど、「健康、清浄」が全面に出ている。これならまだ「省エネ」の方が何倍も重要だ。

エアコンの基本機能とは何なのか、というのがエアコン製品開発の永遠のテーマだ。エアコンは人が快適に暮らす道具であり、そして周りの環境に対して悪影響を与える程度を如何に小さくするかが必要になった。しかし、元を正せば「扇風機」と「ストーブ」だ。それが最新技術のエアコンになったのなら、暑い寒いの制御は完璧に出来てほしい。それが出来ないうちに得体の知れない非科学的造語を、しかも大手家電メーカがこぞって使うなんて。日本の家電メーカは日本の製造業の代表と思っていたがその程度か。(そういえば家電もご多分に漏れず、分社化で、製造元は別会社だが)

いまメーカは物作りに苦悶している。しかし、混迷の原因は案外メーカ自身にあるのかも知れない、と他山の石として感じた次第である。(いや他山ではないことはよく分かっているのだが・・)

というわけで正月休みが終わる。

2002年1月6日